追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ36)

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「これが1つ？」

「そう、ここでフォルダー作って保存しといて？」

そう言って、手で置くジェスチャーをする

「フォルダーって・・・で？次は？」

「当時、私は、まぁ不本意ながら様々な理由があり
夢が実現できず、さらに就職氷河期の真っただ中、
就職先が決まらずにいたんだけど、このままでは家業を継がなきゃいけなくなる
と考えたの」

「まぁ、そうだろうね」

「そこで、ほら、さっきのフォルダー開けて？」

「はい」

そう言って俺は、横に置いておいた架空のフォルダーを目の前に持ってきて
箱を開けるフリをする

「あはは
どうもありがとう、
この兄が行方不明なのと、ニートな立場でいるのとダブルで揃えば
断然、家の思うつぼに成りかねない
そこで、私は祖母に相談したの、
『おばあちゃま？
このまますぐにこの家を継ぐにはリスクが大きいと思うの、
だから、私を一旦おばあちゃまのお力で三友銀行に就職させてくれないかな、
そこで3年社会勉強させてほしいの』って」

俺は目を見開いた

「え・・・じゃあ銀行に就職したのは、親に言われたんじゃなくて」

「そう、時間を先に延ばすための口実だった
その間に兄を探しだそうって思ったの。
コネを使えるだけ使ってやろうって思って
それに、まぁ兄だけに背負わすのもかわいそうだし、
兄が戻ってきたときに、何か言われて振りかざされても困るから
家業を遠くからつかず離れずできる仕事を作ろうと思って
・・・もしもの時のために？」

「・・・」

あの22の屈託のない笑顔の下で
リンは俺との将来のことを考えてたのか？

「あ、今、リンって性格悪って思ったでしょ」

「・・いや？」

「絶対思った。
でもね、それだけ翔と一緒にいたかったのよ」

そう言って笑う

「で、そのもしもの時用の事業をどうしようか
って考えた時に、このワインに目をつけたの
と言っても、その時はまだ漠然とノートの上の世界よ。」

「それって同棲してた時？」

「そう、卒論も終わったし・・・
就職先はなんとなく決まったし
翔はお仕事で家にいる時間も少ないし」

「・・・ごめん」

「あ、いや、違うの。
それが悪いって言う意味じゃなくて
誰もいない部屋だからこそ、ゆっくりと将来の計画が立てれたんだと思う
まず、兄を探すこと、そしてワインを始めるにはどうしたらいいかってこと」

そう言ってワインを飲み
笑ったリン