追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ6)

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「・・・」

「その前に、
あぁマジで、無事でよかったわ」

そう言って、抱きしめながら、窓の外を見た

遠く奥の方に見えている吹流しのような旗が、
今にも折れそうな勢いだった

「かなり揺れたろ？」

そう聞くと

「・・・うん
流石に落ちるかもって覚悟した」

「だろうなあ、俺の時も結構揺れたからさ
怖かったろ？」

俺が、少し体を離して
リンをのぞくように見ると

「翔？
ごめん、私、
次の便トランジットしなきゃいけないから
もう行かなきゃ」

「行かさない」

「そんなの彼氏でもないのに、
言われる筋合いはないんだけど
それと、離してくれる？」

「嫌だ」

「嫌だって、そんな子供じゃあるまいし・・・
誰かに写真でも撮られたら、どうすんのよ」

「別に？俺は困らない」

「私が困る
それに、彼女に勘違いされるのも
嫌」

「彼女とは別れた」

「は？」

俺は、そのまま、抱きしめる

でもすぐさまリンは

「あのさだからと言って、
こんなことされても私にも事情があるの」

「どんな事情だよ、そもそも、
リスボンに行く事情とやらを聴くまで、
俺は離れないから」

・・・

「もう一体なんなん？」

「でた、
おまえの関西弁」

「とりあえず、飛行機乗り遅れると困るから、離してって」

「行かさない」

「ごめん、翔、あのね・・・
私、リスボンに会ってみたい人がいるの」

・・・

・・・

俺はそっと離した
リンはまるで諭すように俺に

「自分の気持ちを確かめに私はリスボンにいくの
だから、離して、お願い」

それは、怒っているというよりは
あきれて、子どもに諭しているような言い方だった

・・・

「気持ち？」

そう言うとリンは俺に
ここ1年くらい、会社の顧客で声しか聴いたことのない男の話をし始めた

１度、その男に会ってみたくなったと言い出した

俺は、胸をまるでわしづかみにされるような気持ちだった

「んだよ、そいつ
絶対怪しいって」

「でも・・・
私を救ってくれたの」

「会ったことないやつに？」

「そう、辛かった事が楽になったのは事実だから」

・・・

「それって、原因俺じゃん？」

「そうは言ってないけど」

「言ってるじゃん
とにかく、３年前に私たちは終わってる」