6 ページ6
「・・・タクシーか」
「でも、タクシー代結構かかちゃうかも、
私、今これしか持ってない」
そう言って、財布を見せる
「俺もだ
こんなことなら、さっき下ろしておけばよかったわ」
「・・・」
そう、俺らはまだ学生で、
当時は、
シティ銀行から、街中の壁に埋もれているATMから現金を出して使っていた時代
しかも、今みたいに、いつでも使えるわけでなく、昼間でないと金を下ろすことができなかった
「・・・」
「それに、タクシーがつかまるかどうかなんて・・・」
「でもやってみないとわかんないじゃん」
そういって、先に、改札から出てしまったリン
「って、おいっ」
改札を出てしまったからには
もう、駅でとどまるという選択肢はなくなり
「はぁ・・」
と溜息とともに、
「じゃあ、とりあえず、タクシーを探そう、
それで2人合わせての金額で
ピサまで行ってもらえるように交渉しよう」
「・・わかった」
とんでもない卒業旅行だった
駅の構内を出たものの
日本とは違い静かで、暗かった
俺は、これ以上リンを不安にさせてはいけないと思い
「リン、迷子になるんじゃねぇぞ」
とリンの手を取ると
リンは笑って、
「すでに迷子じゃん」
と俺を見た。
「まぁ、そうとも言う・・・
しかし・・・
タクシーすら見当たらねぇな・・・」
俺は、リンの手を引いて、少し歩き出す
「ヒッチハイクでもする？」
「は？」
「だって、このままお金もなくて、タクシーもなかったら、
ていうか、
ピサから、ローマ行きの切符代がなかったら、
そもそも、無理になるじゃん、
それに泊まることもできない・・・」
「あ・・忘れてたわ、
それ、ローマまでの切符代をよけとかないと・・・」
「そしたら、タクシー代どころじゃないね
どうしよう、翔」
「寒空の下、野宿だな」
「え？」
「だって、そうじゃん。
まぁ、その時は、お互い裸で温め合わないとなぁ」
「本気で言ってる？」
「え？本気本気
だって、この時間ATMも空いてないし、
てか、リンが、駅を飛び出しちゃうからさ・・・
まだ、駅の中の方が寒さ忍べたのに・・・」
「だって・・・
でも、それを言ったら、翔が、最初の駅に降りちゃうからじゃん
あのまま、フィレンチェまで戻ってたら、
折り返して直通ローマ行きのに乗れたわけでしょ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫姫(プロフ) - すりおろし梨。さん» 翔くんのお母さんって、母でありながら、何かを諭す時だけ息子を他人のように客観的角度から話してるように感じて、それが私情を挟まず的確に伝えていて参考にしたいなと思ってます、特にわが家のモモっ (2020年1月18日 11時) (
レス) id: 798db29bb2 (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - ＊さくら＊さん» 入学式からの４年書き綴ってみましたw間違ってません、どうかそのまま納得してニヤケてくださいw (2020年1月18日 11時) (レス) id: 798db29bb2 (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - すりおろし梨。さん» 実際リアルで私はそう思います。彼からよく当時の話が出るのは、充実して輝いていたんじゃないかなって (2020年1月18日 11時) (レス) id: 798db29bb2 (このIDを非表示/違反報告)
すりおろし梨。(プロフ) - 人柄バロメーター。なるほど。確かに。翔くん母の話は凄く好きです。なんならお会いして子育て講座とか聞きたい。 (2020年1月18日 6時) (レス) id: 726034c2a9 (このIDを非表示/違反報告)
＊さくら＊(プロフ) - 読むたびに、ああ、昔はこんな感じだったんだろうなぁと、間違った納得をしてニヤケたり、応援したりしてます。お忙しい時期なんでしょうが、どうかちゃんと休んでくださいね。 (2020年1月18日 1時) (レス) id: 77b96f2b94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫姫
| 作成日時：2019年12月18日 22時
