別れ ページ26
「厭だ！ いやだいやだいやだ！ 君以外の人と結婚なんてしたくないよ！」
『ごめんね。 せめて、強制的に結婚させられるようなことだけはないように手は回すから』
特徴的な燃えるような赤毛を撫でて、一つ額に接吻を落として立ち上がった。
「・・・行きますか」
『リンタロウに連絡は？』
「入れてあります。 彼に正体を教えなくて良いのですか？」
坂口さんからの質問に、縦に首を振る。 二度と会うことは無いだろう。 会うことがあってはいけないのだ。
『バイバイ、憐君｡ 大好きだよ』
大好きだよ。 大切な君が、いつか私以外の人と幸せになることができるように。 眩しい世界で、私の大好きな向日葵のような笑顔で暮らせるように。 あの幸せな日常を二度と振り向かないと決意して、また私は黒くて暗い沼へと沈んでいくのだ。
「Aちゃん！」
憐君の悲痛な声が聞こえてくるも、決して振り向かずにうずまきの前に停められた黒塗りの車に乗り込む。 此の修学旅行中に、私たちマフィアは彼らの前から姿を消すことになるであろう。
「もう解っているとは思いますが、八重桜は壊滅。 貴女方マフィアはもうこれ以上関わる必要はありません。 早く姿や行方を眩ませたほうが、Aさん自身の為かと」
『高校生としての氷木Aでのお別れをしてからでいい？』
「少人数の人だけにしておいてください。 でないと、彼らの生活に少しずつですが影響が出てきますので」
淡々とした声で私に宣告する坂口さんは、もう妹として可愛がってくれていたあの頃の坂口さんではないのかと再認識して一寸落ち込んだ。
『了解。 楽しかったなぁ、高校生活』
窓の外を見れば、見覚えのある制服を身に纏った少年少女が楽しそうに街を歩いている。
「Aさんは、マフィアに入ったことを後悔していらっしゃいますか？」
坂口さんが言った。 そんな質問、答えるまでもない。
『あるわけない。 こんなに愛してくれる人が居るのだから。 まあ、不満はいっぱいだけどね』
「っは 流石、ポートマフィアの愛し子。 マフィアの人にそんなこと言えるの、貴女くらいですよ」
『褒めてるの？ 貶してるの？』
少々イラッときて聞き返した。
「勿論、褒めてますとも」
流れる街並みに置き去りにされた迷い犬は、泥の底で吠え続ける。
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なすび(プロフ) - りとのおへやさん» 有難うございます！ これからもそう言っていただけるよう、頑張りますね！ (2019年6月2日 21時) (
レス) id: 6cdc79c834 (このIDを非表示/違反報告)
りとのおへや(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです！中也オチマジで神!!!本当に、こんな神作品を読ませていただけて感謝しかないです！ (2019年6月2日 20時) (レス) id: 534e38ce7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なすび | 作成日時：2019年1月30日 21時
