イケメンめ ページ22
「Aちゃんの為ならこれくらいどうってことない。 また会えただけでいいよ。
辛い時に一緒に入れなくて、ごめん・・・」
『いや、それは私が勝手に行方知れずになっただけだから気にしなくてもいいよ。
・・・にしても、おっきくなったねえ。 昔は私よりもずっとちっちゃかったのに、今ではもうこんなにも差が開いちゃった』
弟の様に後ろを引っ付いてきていた憐君は、昔は私よりも随分小さくて守ってあげないと、と思っていたくらいなのに、私の目線は今は憐君の胸の高さだ。
「何時の話してんの? そりゃあ、もう僕も高校生だしね」
『いやぁ、それもそっか・・・。
修学旅行か何かでヨコハマに来たの? 今は・・・高校二年生?』
「まあね。 Aちゃんは、十九歳かぁ・・・成人式ももうすぐだね」
確かに、成人式はもう直ぐだ。 まあ、普通に生きていればの話で、私が出席することができるかどうかは別とするが。
『そうだね。 そっちの女の子たちは、友達?』
「そう。 同じ班の女の子。
ねえ皆、悪いんだけど自由時間は俺抜きで行動してくれない? 一寸俺、この子と喋ってたいから」
憐君がそう言った途端、空気がピシッと固まった。 同じ女子同士だからこそ解るこの微妙な空気感。 のほほんとしている憐君は、気が付いていないみたいだ。
『いや、それは悪いから良いよ。 また会えるから、きっと』
パシッ
「厭だ。 待って」
『えー・・・でも』
慌てて帰ろうと背を向ければ、腕を掴まれた。 嗚呼、周りの女の子たちからの冷たい視線を感じる。 頼む、離せ。
しかし、祈りは全く、一ミクロンも届かずに弾き返されるのだった。
「じゃあ、そういうことで」
「ちょ、待ってよ憐君!」 「ウチ等置いてそんな人と遊ぶなんて酷いじゃん!」
後ろから聞こえてくる女の子たちからの不平不満を聞きながら、如何したものかと思案に暮れる。 勿論、片腕は憐君に握られて街中を走っている。
『れ、憐君。 良いの?』
正確には、(私がクラスで浮いても)良いの? という意味の質問である。 まあ、伝わるなんて最初っから期待していないので、もう諦めた。 無の境地に至った。 悟りを開いた。
「え? 良いって、どういうこと? あの子たちは僕にとっては別に」
イケメンめ
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なすび(プロフ) - りとのおへやさん» 有難うございます! これからもそう言っていただけるよう、頑張りますね! (2019年6月2日 21時) (レス) id: 6cdc79c834 (このIDを非表示/違反報告)
りとのおへや(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです!中也オチマジで神!!!本当に、こんな神作品を読ませていただけて感謝しかないです! (2019年6月2日 20時) (レス) id: 534e38ce7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なすび | 作成日時:2019年1月30日 21時