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55.Hey夏よ ページ8

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東北の地にも夏が来てしまった。






ミンミンと鳴き続ける蝉時雨と地面が波打つ蜃気楼、そしてこの熱気が、夏の訪れを知らせてくる。






夏休みは好きだけど、夏はそこまで好きじゃない。




蒸しっとする空気の中、私は青空を見上げながらそう思った。




今は体育の授業中なのだが、それがまたしんどい。




何で真夏に陸上競技が選択できるのかと、笛を加えたまま50m走スタートラインに立っている先生を恨まずにはいられなかった。






タイムを計り終えた私は、塀で出来た日陰に腰を下ろしてトラックを走る人を見る。





走っているのも数人で、こんな夏に陸上を選ぶなんて、結局はプールが嫌な人間で、仕方なく選択した生徒だけなのだ。




本気でやっている子なんてほとんどいないし、皆自分のタイムを測った後は日陰で涼んでいる。




先生もだるそうで、注意すらしない。




じっとしているだけでも汗が出てくるこの季節、首を伝う汗がうっとおしくて襟を引っ張って拭った。






暑かった。



本当に暑かった。




首を流れる汗も、暑さも。





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だんだんと意識が遠のいていって、視界がぼんやりして来た頃、ピシャリと冷が降ってきた。





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「――――ひぃいいっ!?」





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その朦朧とする意識の中で、頬を引っ叩かれる様な錯覚すら覚える刺激に、私は悲鳴に似た声を上げた。






慌ててうなじを覆うと、その掌にも冷が移る。




それが汗ではない水だと理解したのは随分と後だった。






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「なななななに!?!?!?」






しゃがんでいた足が反射で伸び、何故かぴょんぴょん飛び回ってしまう。





乙女意識中の女子が上げるような悲鳴ではないのは十分に承知している。

しかしそんな事に気が向かない程、どっか行きかけた思考を引き戻した"冷"の刺激が強かったのだ。



体もクルクル回り、状況を確認しようと目線もグルグル回り、しまいにはパニクって脳内もグルグルしてしまう。





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塀を見て、地面を見て、何があったのかと一人で齷齪している時に、噛み殺した笑いが耳に届く。





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その笑いに釣られるように、いまだにうなじを手で隠しながら目線を上にあげた。




―――――――――――――
ここまで読んで下さってありがとうございました!

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白米 - 夢主ちゃんの初々しさが可愛すぎて、岩泉くんがイケメンすぎて、キュンキュンが止まらないです! 言葉選びもとっても素敵で好きが溢れ出します! (2023年1月28日 13時) (レス) @page21 id: c47ed55b6d (このIDを非表示/違反報告)
あおい亜緒(プロフ) - 素敵すぎます、更新待ってます^^ (2021年11月29日 7時) (レス) @page5 id: 4763f9e9c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:結城 | 作成日時:2021年10月3日 23時

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