Unsung Hero Part3

神聖円卓領域 更なる逃走 ページ41

｢……………｣

｢君さえ、居れば私達は何度でも君を助けることができる。君には………酷だと思うがな｣

エミヤの声が淡々と告げる。
死んではいけないのだと。
何があっても。
もはやそれは呪いだ。
生きて欲しいのだと、エミヤは言う。
それは純粋な願いであり、祈りだ。
だが、いつしかそれは呪いになるだろう。
その、いつかは分からない。

｢………歩くよ｣

｢……了解した｣

なら、それがいつしか呪いになるのなら。
私は、その呪いを背負い私らしく生きてやろうと思う。

｢エミヤ｣

｢どうした？マスター｣

｢このまま、この人数で砂漠の夜は過ごせない。だが、危険を犯して移動するのもリスクが高い｣

｢そうだな。どうするんだ？｣

｢そこで、アーチャークラス3人程度で聖都に行く途中にあった山の偵察を頼みたい｣

｢何故だ？｣

｢難民の人の何人かから、山に集落があると聞いた。本当なら、そこに難民の人達を頼みたい｣

｢成程。ついでに、本拠地を置くのもいいだろう。山なら隠れたり、罠を張ったりと工夫ができる｣

｢選出は、君とロビン。そして、アタランテに頼む。指揮は君が取って欲しい｣

｢分かった。なら、マスター達はここでキャンプだな。テントを幾つか作っておこう｣

｢ありがとう。アタランテがこちらに来たら、行動開始して欲しい｣

｢了解した｣

生きてやろう。
誰になんといわれようと。
だって、私にはまだ前に進むための手段も足もある。
立って、歩け。前に進め。
無様に、愚直に。

私は、ただの人間なのだから。
それしかできないのだから。









｢とりあえず、先輩。テントに入られては如何ですか？｣

｢もうちょい起きてるよ。まだ、眠たくないしね｣

夜空を見上げる。
酷く、酷く、酷く。
私にとっては、色々あり過ぎた1日だった。

もう、誰かが死ぬところは見たくない。

怖い。怖くて仕方ないのだ。
だけれども、そんな事を言っている暇はない。
進め。誰よりも、真っ直ぐ。
誰よりも、強く。
誰よりも、愚直に、単純に。

輝く星を助ける事はできなかった。
伸ばした、手を取ってもらうこともしてもらえなかった。
悔しくて、泣きたくてたまらない。
グッと唇を噛み締めて、涙を堪える。
そのまま、テントへと戻る。
マシュが寝ている事を確認し、横で毛布を被って強引に目を瞑る。
何も聞こえないよう、耳を塞ぐ。

この悪夢が、本当に夢であります様にと、叶いもしない願いを心で呟きながら。

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