Unsung Hero Part3

料理教室 ページ2

その日、赤い弓兵は思い出した。
ここには、まともな料理を作るものが自分以外にいないということを。

｢と、言うわけでマスター。料理教室だ｣

｢何でさ｣

｢淑女たるもの、料理の1つや2つ作れないとダメだろう｣

｢淑女って柄でもないんですがね…一応ある程度作れるけどさ…｣

それでは、ダメだとエミヤは言う。

｢大体、作れると言っても決まり切っているだろう？｣

｢す、鋭い！｣

カレーの派生型と、簡単なパスタ系、そしてお米系しか作れない。
この弓兵、出来る。

そんなこんなで、お料理教室である。

｢そしたら、みりん大さじ一杯と…｣

あれから1時間経過した。先ず、初心者でも簡単で美味しく出来る卵料理を伝授してもらっている。
はっきり言おう。作り過ぎだ。

｢エミヤさんエミヤさん｣

｢む？どうした？マスター。あぁ、見てないと焦げるぞ｣

｢おっとっと……危ない危ない…。いやね、作り過ぎじゃ無いかと｣

と、後ろの卵料理のオンパレードを指す。
かに玉は失敗した。反省する。

｢…………確かに作り過ぎたな｣

｢気づくの遅いよ！！まぁ、粗方クーが平らげそうだけどさ！｣

｢彼なら、喜んで食べるだろう。狗だし｣

｢えっ、何それ｣

と、エミヤに聞こうとすると、食堂の自動ドアがシュンッと開いて、クーが凄い形相で入ってくる。

｢誰が、狗だ！｣

｢名前の通りだろ。しかも、今はマスターの従僕(イヌ)だろう？｣

｢おい、読み方可笑しいぞ｣

｢さてはて、何の事やら｣

おいコラ、武器を構えるんじゃありません。

｢はぁ………エミヤ。これ、出来たから味見して｣

と、切り分けた玉子焼きを差し出す。

｢あぁ、頂こう｣

｢あ｣

｢ん？｣

｢あ！｣

口を開けろと、指示する。

｢こ、これでいいか｣

｢よし、どうぞ｣

と、エミヤが開けた口の中に玉子焼きを放り込む。

｢…………ふむ、悪くない｣

と、口をモグモグさせながら言う。

｢マスター、俺にも！｣

と、クーが近付いてくる。

｢煙草臭い奴にはあげませーん。さっさとその匂い落としてきてくださーい｣

｢そりゃねーぜ、マスター｣

｢落としてきたら、あげるよ｣

と、言う。ちぇっ、とクーは食堂を出ていった。

｢…マスター、先程の余り他のサーヴァントにはしない方が良いぞ｣

｢何で？｣

と、首を傾げる。

｢……ある種の輩が、勘違いするだろう？…その、清姫とか｣

｢成程｣

と、妙に納得し出来た料理を配膳しに行く。
その日の、玉子焼きは大評判だった。

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