特異点F その6 帰還 ページ12
｢さて、お別れだ。最期に君の宝物に触れて逝くがいい。まぁ、アレは小規模の太陽、いやブラックホールだ。人間など一溜りもないだろう｣
と、レフ教授が所長の肩を乱暴に押す。
見えない力に引き付けられるように所長はカルデアスに引っ張られていく。
｢………っいや！いやいやいやいやいや！こんな所で終わりたくない！だって！だって！私は！認められてない！褒められていない！誰も私を褒めてくれなかった！認めてくれなかった！！いや！いや！！誰か！誰か！！助けて………！｣
と、必死に手を伸ばす。
｢所長ーー！手を！今｢駄目です！先輩！行っては駄目です！！｣……でも…！所長が！！｣
私は、ただ立ち尽くしていた。何も、出来なかった。
｢それでは、君達ともお別れだ。大人しく、終わりを待つがいい｣
そう、言い残し消えていった。
風が吹き抜け、立香先輩の泣く声が聞こえた。
『ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ皆、お疲れ様。帰還の時間だ』
そして、意識が遠のく。
｢皆、よく無事で帰ってきてくれた｣
｢はい………でも所長が…｣
｢立香先輩…｣
先輩は、目を赤く腫らしていた。
その後、ドクターから色々な説明と状況把握の為施設の損壊の割合と被害を口頭で伝えられた。
そして、死亡者と行方不明者を。
｢父さんが…行方不明…？｣
｢あぁ、今残ったスタッフ何人かに捜索を依頼して居る｣
もしかしたら、生きてるかもしれない。そう、ドクターは言った。
だけど、
｢父さん…………何で…｣
立香先輩には届かなかった。
｢立香先輩…………休みましょう。それから、一緒に先輩のお父さんを探しましょう。先輩……今は休みましょう｣
｢A……………あぁ、うん。そうだな……｣
｢マシュ、部屋の場所教えてくれるかな？｣
｢はい。A先輩｣
と、管制室を後にした。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
｢あーあ。私の紹介遅れてしまったじゃないか｣
｢紹介出来る雰囲気じゃなかっただろう。レオナルド｣
｢まぁ、そうだね。男の子の方もどだけどかなり参っていた。あのまま、戦闘に出せるのかも心配だ｣
｢…今日は、休ませないとね。後でメディカルチェックするからその時に君を紹介するよ｣
｢分かった｣
後で合流しよう。と、レオナルドに言い管制室を後にした。
部屋に戻る途中の廊下で震えてしゃがみこんでいるAちゃんを見かけた。
許して欲しい。身勝手な大人を。
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作者名：キーリア | 作成日時：2016年10月2日 21時
