気持ちの共有 ページ39
ようやく堂々と旅の準備ができると安心して、リムルの言葉をそのまま受け取った。
月が綺麗ですね、なんて、自分に言われるとは思ってなかったから。
『……あ、本当だ』
だから、ほとんど消えかかった月を見ながら、こう答えた。
なんで敬語?
そんな風に思ったけど、何となく雰囲気なのかなあ、と一人で納得した。
少し間が空いて、リムルがほんのり笑って言う。
リムル「……だろ?」
なんだか不自然だな……戻ろうって言ったのに月を眺めるとか。
《……告。個体名:リムル=テンペストは、告白したと思われます》
その『大賢人』の助言がなかったら、私はすっかり見逃していたと思う。
『ん……? 待って、それって』
もしかして──と問うた言葉は口に出ていた。
月が綺麗ですねって、どこかで見たことがある気がするな。
リムル「……ああ」
あ、私が知っている意味で合ってたみたいだ。
えっと……愛しています、みたいなのが意味だったよね、確か。
愛しています……あれ、今はリムルの他に私しか。
……。
……。
──ッ!!
どうしよ、どうしよ、どうしようっ!!
《……》
沈黙してないで、助けてください!?
《…………》
ちょっと!!
え、月が綺麗ですねの後って、なんて言うんだっけ?
完全に混乱した私の頭に、救いの手が差し伸べられた。
《……解。その言葉に対しての一般的な応答は──》
渋々といった様子で、『大賢人』さんが一通りの答えを提示してくれた。
その中で選ぶのは好きにしろ、という強い圧を感じたので、それから先は自分で考えよう。
とにかく何か答えないと、と最初に教えてもらった答えを口にした。
絶対に言うことを間違えたらいけない。
慎重に、ちゃんと頭の中で反芻してから……!
『……あのね、えっと──ずっと前から、綺麗だったよ』
私の返事は、二択で言えば決まっていた。
私が旅に出たくない理由の一つに、
その名前が何か、私は最初から気付いていたんだ。
でもまさか、全く同じ気持ちをリムルも持っているだなんて思っていなかったよ。
リムル「え……」
思わずこぼれたような小ささの声に、こらえきれずに笑ってしまった。
それにつられたのか、力が抜けたように笑うリムル。
さっきは分からなかったけど、すごく緊張していたみたいだ。
喜色を隠しきれていないその顔は、東から昇る日の光に照らされて眩しかった。
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くろわっ(プロフ) - AIさん» いつもご愛読ありがとうございます!とても嬉しいです!もう3に行きそうですが、これからも宜しくお願いします! (2020年8月16日 14時) (レス) id: 802b77c97d (このIDを非表示/違反報告)
AI(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます!これからも頑張って下さい! (2020年8月16日 14時) (レス) id: 70828d2268 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くろわっ | 作成日時:2020年7月9日 16時