開演ブザーは永遠に（３） (ページ50)

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「ウチが無理言ってここまで連れてきてもらって……ウチの親友が、蛍が事件で大怪我して……だからっ、だから、Ｚを追うためにここに……！」

　蛍ちゃんの、妹の名前を出されたというのに、今井先輩の表情は少しも変わらない。静かで凪いでいて、なんの感情も窺い知れない冷たい顔つき。苦しげな妹の顔を今井先輩は間近で見ていたというのに、どうしてそんな顔をするのかと胸を突き刺す痛みを覚える。

「いっ、今井先輩は、蛍ちゃんのこと心配じゃないの……？妹ができたってあんなに喜んでたのに、なんで……！」

　今井先輩が私を見る。悲しみだとか、悔しさだとか、そういった感情が表れればよかったのに、今井先輩ははただ不審な顔をしただけだった。なんで、と口の中で呟いて、あとに続ける言葉を見つけ出せずに押し黙る。

「なんの話かわからないな。だいたい、僕らは君たちが侵入した理由を聞いているんだが」
「…………ユーレイ」

　誰も理由を答えられず、息遣いばかりが広がる中で、棗君が呟いた。

「お前ら、俺たちがここをうろついてる理由なんてとっくに察しついてんだろ」

　通報するならすればいい。穴を調べられて困るのはそっちも同じだろうと、煽ることさえ言ってのける。学園の代表格相手に渡り合い、冷や汗の一つもかかないなんて棗君の肝はどうなっているんだ。私の肝は今井先輩に一瞥されただけで潰れたのに。

「……どこまで知っている」
「……さあな」

　櫻野先輩は棗君を見おろし、反対に、棗君は睨めつけながら見あげる。パチリと冷たい火花でも散りそうなほどの空気だった。
　またしても蜜柑ちゃんがその間に割って入る。

「ウチ、蛍を助けたいんです！Ｚから特効薬を……委員長のアリスも取り返して……！だから、アイツらが学園に入ってきた穴の場所が知りたいんです！お願いです、穴の場所を知ってるなら教えてください！」
「……君はなにか勘違いしている」

　櫻野先輩の右手が蜜柑ちゃんの頭へと伸びて――蜜柑ちゃんが力一杯突き離した。