開演ブザーは永遠に（１） (ページ28)

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ドッジボール-1 ページ28

給食を食べ終わり、昼休みが始まる。友達とお喋りしたり、昼寝をしたり、本を読んだり。おのおの午後に向けて英気を養うこの時間、クラス中の生徒が校庭に集まっていた。

　“ドッジボールしよう！”

　そんな蜜柑ちゃんの誘い、もとい煽りに乗せられて。

　地面に引かれた白線の枠内にみんながぞろぞろと入る。いじめ、いびり反対蜜柑ちゃんチームと、お前ら下僕にしてやるぜ棗君チーム。
　私たち蜜柑ちゃんチームは、最初はリーダーの蜜柑ちゃんに委員長、私の三人ぽっちだったけど、野乃子ちゃんやアンナちゃんたち、さぼりたそうにしている蛍ちゃん、さらに、またまたチート臭い手段で流架君を仲間に引き入れた。これで合計八人。流架君を取られた棗君は敵意バリバリの目で私たちを睨む。まさしくコートの中の魔物だ。
　過大なる威圧感をまったく気にせず笑う蜜柑ちゃん。不機嫌そうな棗君。両者正反対の顔を浮かべながら、戦いの幕は切って落とされた。

「やったー！二人斬り、ダブルアウト！」

　蜜柑ちゃんが投げたボールが相手チームの肩に当たり、跳ねたボールがさらに別の子の腹に当たる。言い出しっぺなだけあってドッジボールが得意らしい。投げられる球のことごとくを受け止め、反対に蜜柑ちゃんが投げたボールは相手チームの誰かに当たる。
　向こうのチームの人数は、こちらの三倍以上だ。残機が多くて、その分人口密度が高い。動きやすさではこちらのほうが勝っている。一人、二人、三人とあっという間に相手をアウトにして、こちらの滑り出しは上々だった。つまり、棗君チームのフラストレーションが溜まりまくりだ。

　試合が始まり少し経った頃。どこか剣呑な空気を漂わせつつ、スミレちゃんと棗君の取り巻き君たちがこそこそと耳打ちしているのが見えた。
　ほんの数秒のやり取り。そのあとから、こちらの内野ではそれこそコートの中にすんでる魔物が悪さをしたかのように、変なことが起きはじめた。野乃子ちゃんの取ろうとしたボールが、明らかに不自然な軌道で曲がる。ボールから逃げようとしたアンナちゃんがなにかに足を掴まれて転ぶ。この試合、アリスの使用は禁止だというのに。
　一人は見学へ、一人は外野へ。こちらのチームも六人に減ってしまった。そんな中、棗君チームの男子の何人かが、ボールを持つ蜜柑ちゃんを見てはにやにやと笑う。