開演ブザーは永遠に（１） (ページ11)

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北の森　後-1 ページ11

パチパチと真っ赤に燃える焚き火を、アリスを使って鎮火する。こういう時に便利だよね。もっと特訓していろんな使い方を覚えなきゃ、いざって時、力になれるように。
　果物の皮は地面に埋めてしまおう。大きめの石か、ちょうどいいサイズの木の板が欲しい。土を掘るものを探していると、ガサッと木が揺れる音がした。

「ん……？」

　鳥がいっせいに羽ばたいたのかな。そう思いながら振り向いたら木をかき分けるヒヨコがいた。目をこすってみる。視力落ちたかも。ヒヨコが軽く十メートルはあるように見える。ピヨ、とヒヨコは鳴いて、少し前に進む。地面がぐらりと揺れた。私の目は正常だった。ちっとも嬉しくない。
　ぎゃああ、きゃああ、ひぇええ。悲鳴をあげてみんなで仲よく逃げ出す。ヒヨコはかわいい。でも、自分の倍以上ある巨大ヒヨコを間近で見て、わー、かわいーとか呑気なこと言ってられない。ヒヨコに埋もれてみたい、なんて密かに抱いていた願いを黒聖杯使ったみたいな叶え方しないでほしい。
　ヒヨコはピヨピヨとかわいらしく、それでいて大声で鳴きながら、刷り込みがされたように私たちのあとを追ってくる。動きは鈍いのにサイズのせいで一歩一歩が大きい。どうにかこうにか撒いて、四人で木の陰に隠れる。

「ど、どうしよ……」
「Aのアリスであのヒヨコ縮ませたり眠らせたりできへんの！？」
「無理だよ！動物とかには使えないもん！」

　“いざって時”くるの、ちょっと早すぎない？自分からついてきたのになんの役にも立ててない。
　眠らせるだけならできなくもないけど、と、蛍ちゃんが呟いて、三対の期待の目が向けられる。ただし、そのあとに鶏肉が好きという言葉が続き、吹き矢を取り出したものだから慌てて止める。話せばわかる。いや、ヒヨコと会話できるとは思ってないが。そもそも話せばわかるという言葉も死亡フラグのかほりがする。もっと穏便な、誰も永眠しない手段を取りたい。でも、どうやって？
　役立たずなりにウンウン唸っていると、委員長がふと思い当たった、という口ぶりで流架君の名前を呟いた。
　たしかに流架君は動物フェロモンのアリスで、こんな場面にはぴったり。とはいえ、どうやってここまで連れてくるのか。ベアに水をかけてから時間が経っている以上、道を引き返して初等部に戻るのも難しい。加えて、無事に初等部に辿りついたとしても、棗君の親友から協力を得られる保証はない。

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