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「ほぉ......」
「......」
鉄鎖さんは恍惚とした様子で刀を見つめ、父は真剣な面持ちで刀を見据えている。
「いやぁ、惚れ惚れしちゃいますよ......これは私史上最高出来と言っても過言ではありませんね」
「あの、この色って何の呼吸の適性色ですか?」
「もう! Aさんったらわざと言わせるんですか? その色は」
「影の呼吸だ」
今まで沈黙を貫き通していた父が鉄鎖さんの言葉を遮った。
「日輪刀を錫色に変え、影の呼吸を全て会得し、Aに命ずる」
「本日をもって、AAをA家今代の当主とする」
一瞬、父から何を言われたのか分からなかった。私がA家の当主......? いくらなんでも早すぎる。
「父さん、私には」
「断るなぞ承知しない」
「っ......」
父からの圧が強く、反論ができない。
「父さん。私はまだ鬼殺隊に入ったばっかりで鬼を一匹も狩っていないのに当主に......」
「A。お前にはA家の当主となる実力も才能も持ち合わせているのだ。俺の目に狂いは無い」
「そうですよ、自信持ってください。なんせ清信さんは元柱なんですよ。その方が言うことは間違い無しですよ」
「でも......」
「大丈夫だ」
父は今まで見たことないくらい優しい笑顔で私の頭をそっと撫でた。
その顔を見てしまい私の目に涙が流れてしまった。
「ははっ......泣き虫なところは昔から変わらないなAは」
「はいどうぞ、Aさん」
鉄鎖さんから手拭いを渡され、それで涙を拭く。
尊敬する師であり父からの使命だ。
言われたからには何かなんでも遂行するしかない。
私は覚悟を決めた。
手拭いをちゃぶ台に置き、私は深く息を吸う。
「わたくし、AAは今代のA家の当主して不肖ながら誠心誠意を持って務めますことをここに誓います」
父は満足げな顔をして頷き、鉄鎖さんは割れんばかりの大きな拍手をしてくれていた。
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作者名:名無し丸 | 作成日時:2021年10月12日 19時