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もう屋敷の中をどのくらい歩いたか分からない。
簡潔に言おう。私は今この屋敷の中で迷ってしまっている。
もうあの鼓の音はしないというのに、戸をいくら開いても部屋に繋がるばかりで、一向に出られる気がしない。
えぇ......この年になって迷い子になるなんてあの世にいる父に顔向けができない。
「カァーカァー」
鴉がこちらに飛んできた。あっ.....この鴉は......!
「来てくれてありがと、ってイダダダダ! 突かないで!」
私の鎹鴉である、黒丸がやって来てくれた。
まさに地獄に仏である。
でも、仏というには些か、いや、かなり暴力的である。
黒丸は私を突きながらも案内をしてくれた。
おかげさまでようやく玄関まで辿り着いた。
黒丸にお礼を言うとカァと一鳴き、一突きすると何処かへ飛び去っていった。
玄関の戸を開くとそこには。
竈門さんと泡を吹いて地面に倒れている少年とぼろぼろに怪我をしている我妻さんと三人の少年少女たちがいた。
これは一体どういう状況なの?
全く把握できない。
「A!」
「Aちゃーーーん!!」
この状況を掴めずに困惑をしていると、竈門さんと我妻さんが私の方へ駆け寄って来た。
「Aちゃんが急にいなくなっちゃったから、俺すごく心配したんだよォー!」
「Aは無事か?」
「私の方は無事です。あの、そちらの方は......」
「あぁ、この人は......」
竈門さんが何が起こったのか色々と説明してくれた。
「えぇ!? この人があの猪頭人間なんですか!?」
「あぁ、そうだ」
ものすごく驚いた。この綺麗な顔立ちの少年がまさかあの猪頭人間......もといこの方は嘴平伊之助さんという名前のようだ。
「屋敷から出たばっかりで悪いが埋葬の手伝いをしてくれないか?」
「もちろん手伝います」
「貴方の仇は取りました。安らかにお休みください」
あの男性の遺体を埋葬し、今は墓となっている前で祈りを込めて言った。
何やら竈門さんたちのところが騒がしい。
そちらに足を向けた。
竈門さんと嘴平さんが言い争いをしているようだ。
「はあ゛ーーーん!? 舐めるんじゃねぇぞ百人でも二百人でも埋めてやるよ 俺が誰よりも埋めてやるわ!!」
と言い残し、どこかへ去ってしまった。
嘴平さんものすごく元気な方だなぁ。
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作者名:名無し丸 | 作成日時:2021年10月12日 19時