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二人で夕食を作り、そして今。父と食事をしている。
普段父とは夕食を食べる時間も食材も違うのでこうして、一緒に作り、食べることなんて本当に久々だ。
更に父は滅多に酒を飲まないが、今日は特別だと言い酒を飲んでいる。
父が柱だった話。今は亡き母の話。私たちの兄弟の話。
普段なら絶対に話題にしないであろう話が父の口からすらすらと出てくる。
特に熱が入っていたのが母の話だ。
母は弟である清介を産んだ後すぐに亡くなってしまった。
母の話をする父はとても楽しそうだった。目を細め、何処かを懐かしそうに見つめる姿がとても印象的だった。
楽しい夕食も終わり、就寝する時間になった。
父に就寝の挨拶を済ませ自室に戻ろうとした時、父に呼び止められた。
「A」
「なんでしょうか」
「こっちに来なさい」
父の言葉通りに動き、近づくとそっと抱きしめられた。
「父さん......?」
「......Aが鬼殺隊に入ったからにはいつ会えるかわからないからな。このぐらいさせてくれないか。いくらお前がどんなに強くなっても死ぬときは死ぬんだ」
「っ......」
「すまないな。不安にさせることを言ってしまって。俺が言うのもなんだが体には気をつけろ。それと」
「お前には小さい頃から色々と苦労をかけてしまったな。それと......鬼殺隊に入り、A家の当主になってくれて本当に感謝している」
涙が溢れてしまい、父の姿がぼやけて見える。
父は私の目尻に溜まっている涙を拭き取ってくれた。
そして、目を細めて頭を優しく撫でる。
「お前のことをいつまでも思っているからな。応援しているぞ」
父は優しい笑みを浮かべてそう告げた。
その晩。父は息を引き取った。
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作者名:名無し丸 | 作成日時:2021年10月12日 19時