君を好きな理由/ちゃる子。 ページ7
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「悪ぃ、待ったか?」
夏に比べたら、外が暗くなる時間が随分と早くなった。そんな11月の放課後、HRの終わりを告げるチャイムが鳴ったのを合図に席を立って教室を出た。俺の教室の前の壁に寄りかかっている女に声をかけると、そいつはいつも通り花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「全然!待ってないよ。…行こう!」
「行くって…何処にだよ?」
俺よりもずっと小さな手が俺の手を引っ張り前へ前へと急ぐ。
朝、放課後寄りたいところがあると言われてから放課後の今までこいつは俺に行き先を教えてくれる事はしなかった。
内緒、の一点張りで、楽しそうに笑う俺の少し前を歩くこいつの後ろ姿を眺める。短い髪の毛が揺れて、いつもこいつがつけている香水の香りが鼻につく。
あまり好きではないこの香りに思わず顔を顰める。
思えば、俺はどうしてこの女、Aと付き合っているんだろう。
俺から好きになった訳では無い。付き合う前は少し話す程度の関係だった。確かにその時から、俺はAの事が少しだけ苦手だったはずだ。
なのにどうしてだろう。付き合ってそろそろ半年が経とうとしている今、考えた事もなかった疑問が頭に浮かんで、Aの後ろ姿をただジッと見つめながら考えた。
「ね、テツ。私の用事が終わったらさ、ご飯も食べに行こう」
「飯?何処で?」
「それも、内緒」
顔を少しだけ後ろに向けて、悪戯な笑みを浮かべながら俺を見てくるA。
まあいいか、なんて半ば諦めて今日は大人しくAに付き合うことにした。
実際にこいつとのデートは嫌いではないし、一緒にいるのも苦ではない。
最近は部活漬けの日々でなかなかデートらしいデートも出来ていなかったから、部活が丁度オフの今日はデートにはもってこいだと思った。
目的地に着くまでの間、どこに向かっているのかも何をしに行くのかも伝えられていない俺はあとどのくらいでそこに着くかもわからないから、さっきふと頭に浮かんだ疑問について考えることにした。
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ru:c - 私の憧れ兼大好きな作者様が揃ってて、発狂しかけました← 一日遅れたけど、黒尾さん誕生日おめでとう。 皆さんこれからもがんばってください!!!! (2016年11月18日 22時) (レス) id: 202298c49d (このIDを非表示/違反報告)
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