愛を考えてみて、それから伝える【黒尾生誕祭】 (ページ30)

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貴方の隣、愛を誓う。/小鳥遊ページ30

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冬になりかけの秋、というのか。それとも、秋だけど冬に近い季節というのか。とにかく寒いこの時期。

「鉄朗、寒い。」

「ホントにそれ。なんだ11月、いきなり寒くなりやがった」

「今日の服もう少し温かいのにしてくれば良かったかな。」

首にマフラーをまいて、コートも着ている私達だけれど寒い。辛うじてマフラーに守られている首元と、彼のコートのポケットの中で彼と繋がれている私の手は温かいけれど。

「手と首は温けぇのに、顔面寒すぎ。」

彼も同じことを思っているようだった。
まだ11月の上旬だというのに、この寒さは本当にありえない。雪でも降るんじゃないか。
冬は沢山イベント等が開催されるから好きだけれど、寒さは本当に好かなかった。

「あ」

と、ここで私は重要なことを思い出した。イベント、といえばクリスマスだけじゃないではない。
隣にいる彼の、誕生日ではないか。

彼は私がいきなり上げた声にはてなマークを浮かべていたがそれを気にしている場合じゃない。彼の誕生日は明日。

何も準備をしていない。これはまず過ぎる。
大学の授業も全てすっぽかして、彼の誕生日プレゼントを選びに行かなきゃと思った。だが、卒業の論文などやらなくてはいけないことが山積みでそうもいかず。

幸い、バイトの給料日が最近だったので財布には余裕があった。だけど何を買うかなんて決めていないし、彼の欲しいものも分からなかった。
今更聞いたらまだ準備してなかったのかと呆れられるか、傷付けてしまうに違いない。最近忙しかったといえど三年も付き合っていた彼氏の3度目の誕生日を忘れる彼女とは。

彼は自分の誕生日だとアピールしてくる人間ではなかった。とはいえ、忘れてしまう私は最低だ。

今日の帰りには二人で買い物をしようかと話をしていたがどうやらそれも無理そうだ。
二人で買い物に行き、その時に選んでもらう、というのも考えたのだが生憎今日誘ったのは私ではなく彼の方で、それでは言い訳に困る。

悩んだ末に私が出した結論は

「鉄朗、やっぱり今日私用事あった。帰りに出掛けるの無理だ。ごめん」

スマホのカレンダーを見ながら言う。もちろん今日の予定表は空白だった。
だけどこうするしかなかったので気付かれないように自然に伝えた。

「…おー。わかった。」

彼はそう言った。本当に悪いと思いながら、ごめんねと呟き、一限の講義が始まるチャイムを聞いて席についた。

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