愛を考えてみて、それから伝える【黒尾生誕祭】 (ページ27)

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さよならを言わないページ27

　
　
　
　一緒に暮らしはじめたのは私が大学三年の頃。
　
　彼も社会人三年目、だいぶ給料が安定してきていたんですよね。
　
　合鍵をくれて、馬鹿みたいに喜んだ私がいました。今思うと、合鍵だけで大袈裟ですね。
　
　きっとそれだけ大好きだったんです。何回も言いますが、もちろん今も。
　
　料理は私が作るようになりましたよね。前から得意だったけど、更に美味しいものを作れるように頑張るようになりました。
　
　掃除も洗濯も二人分。楽しいようで大変な生活でしたが、彼は毎日お仕事なんです。
　
　このくらいしないとダメだろうと思っていました。彼を少しでも労らないと、なんて。
　
　そう、同じベッドで寝るのにも慣れたとき。彼が遅くまで帰ってこないことがあって。次の日もその次の日もなかなか帰ってこなくて。正直、疑っていました。
　
　
　私はバカだと熟思います。
　
　
　
　
　
　
　そんなときに彼からのプロポーズを受けました。
　
　彼は毎日指輪を買うために残業していたらしくって、本当に私が情けなく感じました。
　
　たしかにあなたが言うように安い指輪だったのかもしれない。けれど、私にとってはどんなダイヤモンドより素敵な、綺麗なものでした。
　
　驚きすぎて何も言えずに固まっていて。あなたも少し頬が赤くなっていて、それでいてしっかりと決意のこもった瞳を持っていて。
　
　答えなんて言う暇もなく、あなたはわたしを強く抱き締めてくれました。今でも感触が残っているのですから。
　
　嬉しかった。こんなに嬉しいことがこの世に存在していたんだね、なんて心のなかで笑っていたりしました。
　
　情けないくらいに泣いてしまって、あなたが慰めてくれました。
　
　
　こんなふうに優しい彼と連れ添っていけることに何よりの幸せを感じています。
　
　ありがとう、京治さん。
　
　あなたと共に生涯を過ごしていけるのなら、本望です。
　
　
　
　
　では、今日この場で妻としての私が言いたいことは以上です。
　
　次は、妹としての私の話をさせてもらいます。
　
　
　赤葦Aではなく、黒尾Aとして。
　
　最後に名乗る、名前として。
　
　
　少し短めですがスピーチをさせていただこうと思います。
　
　
　実はこれはサプライズなので、兄には何も言ってません。
　
　
　ほら、お兄ちゃん。前においでよ。
　
　
　
　
　