愛を考えてみて、それから伝える【黒尾生誕祭】 (ページ21)

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その日まで教えないページ21

　

ただ夢の中より少しだけ、紡がれた言葉が少ないこと。

充分嬉しいし幸せだけど、それがなんだか妙に悔しくて、夢で終わらせたくなくて、静かに話し出した。

「……A。俺さ、誕生日じゃん？」

「うん？」

「一つ、お願いがあんだけど」

「なにー？」

俺が未だ寝転がったままのベッドに、楽しそうに頬杖をついて聞き返してくるA。

隙を見せる彼女の後頭部に手を回して引き寄せ、その小さな唇にそっと自分の唇を押し当てた。

「え、な、なにいきなり！」

「や、今のはしたくなったからしただけ。んで本題だけど……大学卒業したら、俺と一緒に暮らしませんか」

「え、」

驚きの表情を連発する彼女。

Aからすると突然かもしれないけど、俺はあの幸せを夢で終わらせたくはないし、同棲自体は前々から考えていたから。

……あの夢は、言い出すための良いきっかけになったということで。

「Aちゃん、返事は？」

「……一緒に暮らしたい、から……お願いします」

「うん、俺も」

少し照れてはにかむAに、もう一度短くキスをした。

「誕生日、毎年祝ってくれてありがとな。数年後は俺がびっくりするようなプレゼント、期待してっから」

「いえいえ……って、なんの話？何か欲しいものでもあるの？」

「ぶはっ……違ぇよ。こっちの話。あんま気にすんな」

「なにそれ、意味わかんない」

少し尖った言い方をして、面白くなさそうにするA。
そんな彼女が愛しくて、ベッドから体を起こし自分の腕の中に閉じこめた。

夢見た幸せな未来を、きっと現実にしてみせるから。

いつか訪れるその日までは、俺だけの秘密。
夢と同じように、俺の背中に腕を回したお前には、内緒にしておくよ。

fin.

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今回『その日まで教えない』を書かせていただきました、ゆうです。
黒尾さんのお誕生日記念にこちらの合作に参加させていただけたこと、とても嬉しく、光栄に思います。

今回のお話、幸せな二人を少しでも想像していただけていたら嬉しいです。

お誘いして下さったスタぁとさん、合作して下さった作者様方、読んで下さった読者の皆様、本当にありがとうございました。

普段はこんな感じの作品を書かせていただいてます。

さよなら未完成【黒尾鉄朗】

ゆう

　
　