愛を考えてみて、それから伝える【黒尾生誕祭】 (ページ19)

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その日まで教えないページ19

　

「ごちそーさまデシタ」

「ふふ、美味しかった？」

「……当たり前だろ」

腹一杯になるまで美味い夕飯を堪能したとは言え、面と向かって言うのはなんだか照れくさい。

いつもだったらこんなこと聞いてこないのに、わざわざ口に出して聞いてくるAも珍しい。

それでも今の言葉はもちろん嘘じゃないし、それでAがこうして嬉しそうに笑ってくれるなら良いと思った。

満足そうな笑みを浮かべて立ち上がったAは、冷蔵庫から手作りらしいケーキを取り出してきてテーブルに置く。

その直後「ちょっと待ってて」とリビングから出ていった。

ケーキ食うんじゃねぇの？なんて頭に疑問を浮かべた俺をよそに、少ししてから戻ってきたAは後ろ手に何かを隠しているような、そんな仕草を見せる。

明らかにプレゼントだとわかるそれに、思わず笑ってしまった。

「や、Aサン？こんなこと言うの悪ぃけど、それ隠してるって言わねぇから」

「……それは自分でも思った」

視線が絡むと同時に、二人して吹き出した。

諦めたのか、シンプルな包装が施されたプレゼントをテーブルの上に置いたA。

その後すぐに席に着いた彼女は、頬杖をつきながらふんわりと笑う。

「改めて、誕生日おめでとう！生まれてきてくれて、私と出会ってくれて……結婚してくれてありがとう」

「俺の方こそありがとう。……今年はちょっと変わったんだな、その言葉」

「ふふ。こういう時じゃないと言えないから」

恥ずかしそうに笑うAも、その言葉に胸がくすぐったくなるくらいの幸せを覚えた俺も、きっと昔と変わっていないんだと思う。

関係性は変わっても変わらないこの感情が、なんだかやけに嬉しかった。

談笑しながらケーキを食べて、もらったプレゼントを開ける。
中身はネクタイだった。

「絶対鉄朗に似合うと思って」

「サンキュ。大事に使うわ」

「うん、そうしてくれると嬉しい。……あのさ、鉄朗」

「ん？」

「実はもう一つ、プレゼントがあるの」

首を傾げる俺にクスクス笑いながらAは席を立ち、引き出しの中から何かを取り出して、俺には見えないよう後ろ手に隠す。

「何よりも大事にして欲しい」

「え、」

俺の背後からそっと、言葉と共にそれをテーブルに置いたA。
驚いた俺が漏らした声は、とてつもなく情けなかった。

　
　