獣の海と雫の方舟 (ページ5)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:7,282 hit

３話ページ5

______________________________

馬車の揺れが意外と心地よく、うたたねをしてた。正直最初は嫌だった。馬車もそうだが、引っ越し、という事自体が。…でも都合上こうするしかなかったのだ。
早く俺は何処かで休みたかった。長い間苦手な船に揺られ続けて、港から馬車乗り場まで9kmの砂利道を歩き続けて足も身もくたくただ。

「お客さーん、つきましたよ～♪」

俺の乗っている馬車は街の入り口らしき所にある馬のマークがかかれた看板の前で止まる。

「またのご利用、うまちしておりまぁーす。馬があうご友人も、すぐにできますよ～、では～」

所々、馬を混ぜてくるのはシャレのつもりだろうか。生憎俺はそういうサービスに対応できるような人間ではない。大きな荷物を引き取って聞かなかったことにする。

「……ありがとうございます。」

代金を支払い、〝馬に〟礼を言う。そう、馬に。俺がおかしいやつだとかそういう問題の話ではない。

この土地に入った時からそうだった。

__この場所…この島国では、動物が人の言葉をしゃべる…というか動物の言葉が自然と通じる、ようだ。
他にも世間的に存在はあまり知られてないがハンターというやつが危ないとか…という話もあるらしい。母さんから色々聞いていたがやはり実際言葉が通じると驚くものだ。声だって、口調だって１人１人、いや一匹一匹個性がある。先ほどの馬のように。
世界には不思議なものがまだまだあるなぁ。

疲れを抱えている俺は新しい家であり仕事場でもある獣人のアジト、マルシへと向かった。