２０話 ページ22
そういえば…。【リンク】を使わなかった、ということは俺が捕まっていた一部始終を見ていたことになる。つまりは彼が夜汝の気を引き、自分達を助けてくれたということ。
礼の１つもいっていない俺は失礼な奴だと思われるだろう…。
「あの、氷河…さん。」
「ボクは呼び捨てでいいよ。」
少し先を行く彼は柔らかな声をしていた。
「さっきはありがと…う。」
「うん。それより、森出たよ。」
ふっと、馴染んだ景色を想像していたが血生臭いのが淡い期待をも抱かせない。
町…。心配していた通り、視界に映るもののほとんどはもとの形が把握できないほどには破壊されつくしていた。
ただ、奇怪だったのがそれがある一本の道を境にして、全く別の景色…。正確に言えば、ハンターが来る前の状態のまま。だった。
side ハンター・夜汝
完全に、見失った。
こんな失態を犯した自分は捨てられてしまうだろうか。けれど、きちんとサルグ様に報告をしなければ、後で“あの方”からもっと酷い罰を受けるはず。重い足を引きずりながら、祠へと戻ってきた。
「サルグ…様。」
彼は背中を向けていて、表情が読み取れない。
「夜汝か。あの二人はどうした。」
「………っ、あれ、は。」
言い訳なんてしても、見苦しいだけ。簡潔にそれだけを言わなければ。
「…逃し、ました。…大変申し訳ないのです。」
「…そうか。」
「なんの手柄も無しには戻れないのです。今から、また獣人を捕まえて…！」
「待て。」
走りだそうとした自分を彼は短く引き留めた。
怒られる。捨てられる。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
サルグ様は振り向いて、自分に小さな何かを見せた。自然に出来たようなものではない形のそれは、おもちゃのようで、不思議に惹き付けられる何かがあった。
「なんの手柄も無し、という訳ではないようだ。」
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作者名：黒夏 | 作成日時：2018年3月30日 11時
