忍の鉄則その二百四 ページ12
利吉side
甘味処の女性の名前は八剣暁さんというらしい。だが､このことは本人に聞いたのではなく土井先生から聞いた話だ。
土井先生に暁さんの話を詳しく聞いた私は､すぐにでも暁さんの元に行きたかった。
甘味処に行った時､土井先生はそこまで暁さんに興味を持っていなかったので､私は油断していた。
まさか私がいない所で暁さんと土井先生が出会って､あまつさえ一緒に暮らしていたと！？
そんな事誰が想像できた？とんだ神のイタズラだ。
しかも､それだけでなく一部の忍たま達も暁さんと交流を持っていた､というか懐いていた。
これはマズイ､非常にマズイ。一番初めに暁さんに出会った私が一番暁さんと関わりを持ててないのはマズイ。
私はこの事態に狼狽え､何も考えずやっと空いた時間に店まで来てしまった。
辺りはすっかり暗くなり､当然店もやっていないこの時間に。
私はこの後どうするか決めかね､しかし店から離れるのも口惜しく数刻の間店の前の物陰に隠れて中の様子を伺っていた。
⋯今やっている事があまり宜しくないのを理解しながら。
どうやら中に人は居るようで､話し声のようなものが聞こえる。土井先生の話では私が行かない間に暁さんには同居人が出来ていたらしい。
小さな子供と暮らしているとか。優しい彼女らしいと言えるだろう。
⋯まだ1度しか関わっていないが。
利吉｢しかし､聞いていた話よりも中の気配が多いような⋯？｣ﾎﾞｿｯ
先程から店の中の方から料理のいい匂いが立ち込めているが､民家の方からも声が複数聞こえる気がする。
私は中の様子が気になり､少し前のめりに様子を伺おうとした
その時だった。
｢誰だッッ！！⋯⋯って､は｣
利吉｢！？｣
突然､店の中から人が出てきた､そう。私が今まで会いたくてたまらなかった人が。
彼女は最初警戒心たっぷりの顔で中から勢いよく出てくると､私とバッチリ目が合い､キョトンとした表情に変化した
あぁ､表情がコロコロと変わる貴方を見れてなぜだかそれだけで心が満ちた。
だがしかし､この状況はマズイ。今一番会いたくて､だけども一番会いたくなかった人に気づかれてしまった
利吉｢こ､こんばんは暁さん⋯｣
｢？？？｣
すると､暁さんの顔が今度は唖然とした顔から困惑した表情に変化した。
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作者名：鈴村十四郎 | 作成日時：2022年3月6日 21時
