短編集楽しんでってよ【d!】 (ページ3)

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A目線

tn｢……鬱先生それ誰の？｣
ut｢Aちゃんに寄ってくる奴の。｣

とんちは鬱先生を宥めるように優しく聞く。
多分だけど、あの血は私に告白してくれた人の血なのだろう。

tn「どゆことや。流石に殺したらだめやろ？」
ut「やって、Aちゃんと付き合おうとしたから…」

鬱先生は涙ぐみながら言葉を紡ぐ。
とんちは相変わらず落ち着いている。いや、落ち着きすぎだ。

tn「……それほんまなん？A。」
A『え、うん。付き合うことになったよ！まあ、仮なんだけど…』
tn「なんで………」

A『え？』
tn「俺らが何でもやってあげてたやん。勉強だって手伝ったし、委員会だって…！」

とんちが声を荒らげる。
この感じ、鬱先生と一緒だ。

A『お、おかしいよ…？何でも、ではないよ…』
tn「なんでもや！Aに近寄る男共は皆脅して、寄らないようにしたで？あとな、五月蝿い親もどうにかしたった。あとな、GPS付けて、Aが危ない状況に陥ってたら助けに行ってあげたんや！やから、Aは俺らが守ってあげててん！」

とんちもだ。
おかしい、こんなの可笑しい。
私達はただの仲のいい幼馴染なだけで、こんなことになるなんて…

A『わ、わたしは2人のものなんかじゃない！だから、私のプライベートには口出ししないで！守られなくても、大丈夫だから！』

とんちが目を見開いて驚く。
まずい、と思った時にはもう遅い。

tn「……A、変わってしもたんやな。前は俺達の言うこと聞いてくれたんに。」

とんちの目が黒く、静かに濁っていく。
脳が危険信号を出し始める。
逃げなきゃ……

tn「誰かに何かされたんやろ？だから、変わったんやろ？………昔のAに戻さなきゃ……」
ut「あえ……とんち？」

とんちは鬱先生から包丁を奪い取る。
そして、とんちは両手で持った包丁の先をこちらに向ける。

A『いや、来ないで……やめて…！』
tn「大丈夫。痛いのなんて、一瞬やから。」

足がすくんで動かない。
目の前のとんちと鬱先生には、理性なんてものは残っていない気がする。

ut「これで、Aちゃんに戻るんやな…！」
tn「A、痛かったらごめんな？」

私の体は認めたくないようだが、脳は死が迫っているのを嫌な程に理解している。
嗚呼、幼馴染なんて、頼るんじゃなかった。

最後に見えたのは狂気じみた笑顔を浮かべる幼馴染と、私から流れる紅い液体だった。