169話 ページ23
｢エースちゃん、今がチャンスじゃない？｣
ガヤガヤとハーツラビュル寮生がパーティを満喫する中、ダイヤモンド先輩がエースくんに声をかける。
まぁ、パーティは始まったばかりだし、ケーキを出すならいい頃合いか。
｢よし……。
あの〜、寮長｣
｢キミは…、あぁ、タルト泥棒の1年生か。｣
｢えーっと、タルトを食べちゃったことを謝りたいと思って、新しくタルトを焼いてきたんですけど。｣
｢ふぅん。一応聞くけど、なんのタルトを？｣
相変わらずリドルくんは厳しい。
謝りたいからタルトを焼いて来たと言ったエースくんに顔色ひとつ変えずに淡々と返事をしている。
僕ならタルトを焼いてきたと聞いた時点で喜んでしまいそうなのに。
｢よくぞ聞いてくれました！
旬の栗をたっぷり使ったマロンタルトです！｣
自信たっぷりに告げるエースくん。
その言葉を聞いたリドルくんは
｢マロンタルトだって！？信じられない！｣
と、と大きな声を上げた。
何やら様子がおかしい。
｢えぇ！？｣
いや、そうなるよね。驚いたエースくんを見ながらうんうんと心の中で頷く。
なんでリドルくんが機嫌を悪くしたのか理解できない。
｢ハートの女王の法律・第562条
｢『なんでもない日』のティーパーティにマロンタルトを持ち込むべからず。｣これは重大な
なんてことをしてくれたんだい！？
完璧な『何でもない日』が台無しじゃないか！｣
あぁー！！アズールと一緒に持っていくものを考えた日に、なんだかそんなことを言っていた気がする。
元々甘いものを持っていく予定ではなかったからすっかり忘れていた。
なんだか今日は忘れることが多いなぁ。
｢だ、第562条！？｣
｢全部で何条まであるんですか！？｣
デュースくんとユウくんが声を上げる。
何条まであったっけ、確か800近くあった気がする。覚えきれないよあんなの。
｢全810条、ボクはすべて頭に入ってるよ。
寮長なんだから当然だろう。｣
惜しい。810条だったか。
というか全部覚えないと寮長になれない事はないだろう。絶対無理だもん。どっかに全部覚えきれなかった寮長いるはずだよ。
｢あゃー、こりゃヤバイ。…トレイくん、知ってた？｣
｢俺が暗記できてるのは第350条までだ。
完全に油断してた。タルトの種類にまでルールがあるなんて。｣
ダイヤモンド先輩とクローバー先輩が焦っている。
というか、350条まで暗記してるクローバー先輩も凄いよ…。
なにこれ、ハーツラビュル寮こわ。
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作者名：黒梦 | 作成日時：2020年11月1日 18時
