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四十四話 ページ4

痺れるような痛みに顔を歪めた。


 頬を掠めた拳を振り被った相手を睨み、俺は力任せにそのがら空きの頬を打ってやった。


 ドシャッと音がして地面に倒れ伏す相手。俺は頬を拭って倒れた相手の腹の上に脚を強引に乗せた。



「うッ、ぐ…あ…」



「うるっせぇなあ。ほら、財布出せよ。あ? なんだよ、その眼は。



泥棒だとでも言いてえのか? 何でも言えよ。どうせ退学なんて目に見えてる」



 むしろそっちの方がいい、にやりと口を歪めると俺を見上げたこいつは情けなく短い悲鳴を上げた。


 長い溜息を吐き、腹から足を退けるとそのまま脇腹を蹴り上げる。


 痛みのせいでバタつく脚を視線に捉えながら俺は屈み、相手のポケットをまさぐった。



「…アンタ、何、財布持ってねぇの?」



 大きく舌打ちをして、俺は腹いせにもう一度脇腹を蹴った。さっきよりも強く。



「金無しの奴に興味ねえんだよ。さっさと失せろ」



 脇腹を抑えて立ち上がるこいつ。でも動きにくいのかもたついていて、俺はその背中を力任せに蹴った。


 デカい音をまき散らしながら路地裏を出ていく。それを尻目に再び溜息を吐いた。



「また、イライラしてんな」



 声のした方に目を逸らせば、俺の仲間がそこには立っていて、ポケットに手を突っ込んでいた。



「……別に、なんでもねぇよ」



「あーそう? 俺には、イライラしててどうしようもありませんって言ってるように見えっけど」



「うるせえな、お前も」



 軽く謝って来るそいつに舌打ちを洩らす。


 へらへらしているが、実質最も信頼を寄せていることに変わりはない。北軍一時リーダーも容認した奴だ。


 俺は壁に凭れてそいつを尻目に口を開いた。



「で、なんかあったのか」



「……ここ2週間、南軍に変わりはない。ただ、北軍は暴動が起こってる」



 はあ? と声を洩らしてしまった。


 何で暴動なんかが。



「随分イキがってる奴がいてな。1年だよ。お前がいないから、調子にでも乗ってるんだろ。



――――最悪、下剋上が起こる。北軍の中でな」



 その話を聞き、俺はははっ、と笑った。


 怪訝な表情で俺を見る仲間に、俺は口元を歪めた。



「喧嘩上等。なんならお前は、俺がそんな奴らに負けるとでも思ってんのか? だったら要らない心配だな。



――――俺がやられるなんざ、有り得ねえ話だよ」



 ×××

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設定タグ:おそ松さん , 喧嘩松 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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れもん - 東郷さんについてこの後兄弟に話したのかとか一松を実は守っていたということに対して兄弟がどのような態度で黒斗に接するのかなど気になる部分は多々あります…書いて欲しかった…。主人公が理不尽な目にあって六つ子が悪役に見えなくもないですが良い作品でした。 (2022年1月21日 22時) (レス) @page33 id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
神野 赤月 - とても泣いてしまいました。いい作品ですね! (2017年8月24日 7時) (レス) id: 1f93e928e5 (このIDを非表示/違反報告)
リュウア(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールの小説で物凄く久しぶりに泣きました。作者様にこのコメントが読んでいただけるか分かりませんが本当に面白く、何かを考えさせられる小説でした。とっても面白かったです。 (2017年5月28日 21時) (レス) id: ef6262a277 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 何か主人公が理不尽すぎる気がします (2017年3月30日 21時) (レス) id: be64f1ec17 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - いの近さん» コメントありがとうございます!私も、読者さんと同じ気持ちです!素敵と呼ばせてもらえる主人公と松野兄弟が書けて良かったです!最後までありがとうございました。 (2017年1月22日 11時) (レス) id: 095eb051dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルアルア | 作成日時:2016年10月23日 18時

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