五十三話 ページ13
路地裏。
たまたま入ったそこで、俺は眼を見張った。
一松兄さんと十四松兄さんが来たのだ。
俺は辺り、とは言えど路地裏の外に視線を移してから、再び二人を見た。
「……何の用」
疑問符をつけず、俺がそう問いかけると二人は一瞬だけ顔を見合わせた。
「ちゃんと、訊きたいことがあるんだよ」
一松兄さんがそう言うと、十四松兄さんは数回頷いた。
正直、十四松兄さんの顔を見るのがむずがゆく感じる。
俺は二人から視線を外して背を向ける。後ろで兄さんが身じろいだ。
「なんで、そんな傷だらけなの?」
咄嗟に振り返る。俺は反論するために口を開いた。
「喧嘩だよ。兄さんだっていつも見てるだろ」
「違う、そうじゃないよ、A。喧嘩じゃない。
時々、大怪我して帰って来るじゃん。あれってなんなの?
だってAは強いじゃん。だったらなんであんな傷だらけになるの」
ポケットに手を入れ、俺は短く溜息を吐いた。
「…別に。相手が悪かっただけ。でも俺が負けるわけないし」
「ふーん」と疑いを掛ける声に、俺はじっと一松兄さんを見つめる。
すると、十四松兄さんが長い袖で口元を隠しながら声を上げる。
「なんでポケットに手を入れたの?」
どきっとした。
兄貴――――カラ松に言われたことを思い出す。
本当に十四松兄さんは俺をよく見てる。だからこそ、怖いのだ。
兄さんに、何もかも見透かされ、全てを理解されてしまいそうだ。
「よく見るよね。Aはよくポッケに手を入れるもん」
俺が俯いたのを見て、一松兄さんが俺の顔を覗き込む。
「……A?」
「――――ほんと、兄弟って似てるよな」
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れもん - 東郷さんについてこの後兄弟に話したのかとか一松を実は守っていたということに対して兄弟がどのような態度で黒斗に接するのかなど気になる部分は多々あります…書いて欲しかった…。主人公が理不尽な目にあって六つ子が悪役に見えなくもないですが良い作品でした。 (2022年1月21日 22時) (レス) @page33 id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
神野 赤月 - とても泣いてしまいました。いい作品ですね! (2017年8月24日 7時) (レス) id: 1f93e928e5 (このIDを非表示/違反報告)
リュウア(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールの小説で物凄く久しぶりに泣きました。作者様にこのコメントが読んでいただけるか分かりませんが本当に面白く、何かを考えさせられる小説でした。とっても面白かったです。 (2017年5月28日 21時) (レス) id: ef6262a277 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 何か主人公が理不尽すぎる気がします (2017年3月30日 21時) (レス) id: be64f1ec17 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - いの近さん» コメントありがとうございます!私も、読者さんと同じ気持ちです!素敵と呼ばせてもらえる主人公と松野兄弟が書けて良かったです!最後までありがとうございました。 (2017年1月22日 11時) (レス) id: 095eb051dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2016年10月23日 18時