五十一話 ページ11
「一体何の用でここに来たんだよ」
「北軍リーダーが変わる可能性があるからさ、それを見守りに来た」
「――――………あ、っそ。
じゃあ見てろよ。俺がここにいる限り、俺はここのリーダーだっつーことを」
そう言ったAは踵を返して俺たちの前から姿を消した。
あの集団の中に入った途端、殴る音や蹴る音が激しくなる。北棟の窓にこちらを見る生徒も増えた気がする。
俺は時折見えるAの姿を見ながら、ふと考え事をした。
Aはいつから喧嘩っ早くなっただろうか、と。
少なくとも中二の前半ごろはもっと大人しかったし、寧ろ真面目だった。
喧嘩ばっかする俺とカラ松、チョロ松と違って、細くてひょろっこくて、喧嘩なんかしたらボコボコにされて終わるような奴だ。
「……なあ、カラ松」
俺はポケットに手を突っ込んで、隣に立つカラ松に声を掛けた。
「――――………あの、バカ弟は、なんでああなっちまったんだと思うよ」
「…ああ、愚問だな。突然変わったのは分かるが」
次の言葉を発そうとしたカラ松を遮り、どさっと誰かが倒れる音がした。
全員の視線がそこへ向かい、しんと静まる。
「うぅっ…」
一年生を率いてた奴が倒れている。
ポケットに手を突っ込んだまま、そいつの上に跨るように立つA。
そいつは無表情のまま見降ろすAに、怯えた顔で後退っている。
片膝を立てたAは、そいつの胸ぐらを掴んだ。
「二度と、こんなふざけたマネするなよ。いいか、肝に銘じておけ。
――――北軍リーダーは、俺一人だけだ」
低い声がその場に響いた。
×××
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れもん - 東郷さんについてこの後兄弟に話したのかとか一松を実は守っていたということに対して兄弟がどのような態度で黒斗に接するのかなど気になる部分は多々あります…書いて欲しかった…。主人公が理不尽な目にあって六つ子が悪役に見えなくもないですが良い作品でした。 (2022年1月21日 22時) (レス) @page33 id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
神野 赤月 - とても泣いてしまいました。いい作品ですね! (2017年8月24日 7時) (レス) id: 1f93e928e5 (このIDを非表示/違反報告)
リュウア(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールの小説で物凄く久しぶりに泣きました。作者様にこのコメントが読んでいただけるか分かりませんが本当に面白く、何かを考えさせられる小説でした。とっても面白かったです。 (2017年5月28日 21時) (レス) id: ef6262a277 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 何か主人公が理不尽すぎる気がします (2017年3月30日 21時) (レス) id: be64f1ec17 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - いの近さん» コメントありがとうございます!私も、読者さんと同じ気持ちです!素敵と呼ばせてもらえる主人公と松野兄弟が書けて良かったです!最後までありがとうございました。 (2017年1月22日 11時) (レス) id: 095eb051dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2016年10月23日 18時