27.開いた心 ページ29
牛沢side
俺はただ静かに見守っていた。
キヨが、あの人に微塵も興味を持たないキヨがAの心を開こうとしてる。
一生懸命に思ったことを伝えている。あいつなりの精一杯でAの心を開こうと頑張ってる。
正直な話、ここでAの心をキヨが開いてしまったら、俺にとってはあんまりいいことじゃないのかもしんないけど。
でも、あいつの重たいものが少しでも軽くなるなら。あいつが楽になるなら。
あいつが幸せなら俺も幸せだから。
静かにことを見守っていた。
Aは泣いていた。キヨの言葉を聞いて。
Aが泣いたのを見るのはこれで三回目だ。
一度目は三歳くらいの頃。遠足のときにAがはぐれて、それで泣いてた。
二度目は、中学校の頃。あいつが親に猫を被るようになったあの事件のとき。いきなり俺の前に現れて、目に光が宿ってなくて。どうしたって話しかけたら、やっと現実に帰ってきたかのように俺をしっかりと見て、そして。
ぽろぽろと涙を流した。静かに。声も出さずに。
基本泣かないあいつが泣いたのを見たのは今までたったの二回だけ。これだけ一緒にいる俺が二回しか見たことないなら多くても五回ぐらいしか泣いたことないようなAが。
今、他の誰でもないキヨの言葉で泣いてる。
あぁ、キヨはAの心を開きやがったって。
その時俺は確信した。
Aは暴言のようなものをたくさん吐いて、これが素だ、それでもいいのかとキヨに問いた。
あいつは迷いもなく答えた。
「いえる。何度でもいえるよ。
完璧人間なんていない。俺らの前では猫被らなくていいよ。
俺らの前では、猫被らないで。」
キヨがそう言ったとき、すぐに、あいつが声を出した。
「お、俺も！俺もそう思う！完璧人間だとかいないべや！少しくらい怒ったり、失敗したりした方が人間らしいべ！
だから、俺らの前では猫被らなくていいべや！」
方言が出てしまうほど一生懸命に、フジは言った。
きっと、心に響いたはずだ。
「……馬鹿じゃん、なにそれ。私、暴言吐きまくるよ？愛想良くていつでもにこにこしてる委員長じゃなくなるんだよ？
それでもいいの？それでも、いいって言ってくれる？」
泣きながらそう言ったAの問いかけに、二人は
ニコッと笑って答えた。
「「もちろん。」」
その答えを聞いてAは声を上げて泣いた。
きっと、Aの中では自分を受け入れようとしてくれたことは本当に嬉しかったんだな。
良かったじゃん。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 186人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
【実況者】帰ってきた歌姫９【ky】
メンヘラ彼氏に溺愛され過ぎて困ってます。【ky】
運 営 さ ん 達 と の 毎 日 / してみた されてみた Part12 ※ 現在リクエスト停止中
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロミミ(プロフ) - 美怜さん» 全然ですよ！いい意見が貰えました！助かりました！今後の成長のために使わせて頂きますね。嬉しいです。有難うございます！これからも見てくださればうれしいです！ (2019年4月11日 20時) (
レス) id: 25617d98ae (このIDを非表示/違反報告)
美怜(プロフ) - クロミミさん» 本当に気分を害されたらすみません…これから本当にこの作品の応援をしていきますね！！(*^^*) (2019年4月11日 20時) (レス) id: a91e59d2ae (このIDを非表示/違反報告)
クロミミ(プロフ) - 美怜さん» 更新を頑張っていきたいと思っているのでよろしくお願いします。 (2019年4月11日 19時) (レス) id: 25617d98ae (このIDを非表示/違反報告)
クロミミ(プロフ) - 美怜さん» するんですけど、色々と伝わっていないということが分かりましたので、もう少し工夫をしていきたいと思います。私だって凡人ですよ！私みたいな文才のない者が書いた作品をわざわざ読んで頂き、わざわざアドバイスまで下さってありがとうございました。これからも (2019年4月11日 19時) (レス) id: 25617d98ae (このIDを非表示/違反報告)
クロミミ(プロフ) - 美怜さん» なるほど。確かにそうかもしれませんね。私的には主人公がそれほどに皆に気を許しているというか、理解し合ってるという感じのことを伝えたくてそういう書き方をしているのですが、上手く伝えられていないようですね…。主人公視点をあまり書かないのもこだわりだったり (2019年4月11日 19時) (レス) id: 25617d98ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クロミミ | 作成日時：2019年2月9日 22時
