16話 櫛 ページ17
その知らせは突然だった
「煉獄杏寿郎、無限列車デ上弦ノ参トノ戦イニテ、死亡!!煉獄杏寿郎、無限列車デ…」
嘘だ。嘘に決まってる。杏寿郎が死ぬなんて、嘘だ
「Aさん」
『千寿郎くん』
玄関から顔を出して頭を下げる千寿郎くんに、私も頭を下げた。履き物を脱ごうとしたときに一人他の人が来ている
「上がってください」
そう通された先にいたのは炭治郎君だった。炭治郎君は私に頭を下げる
『炭治郎君が…杏寿郎の最期を?』
「はい」
炭治郎君は言った。強く、そこにいた誰も死なせずに責務を全うしたそうだ。そして、言葉を遺したと…
「煙上さん、そのままお伝えします。"おめでとう、そして約束を守れずすまなかった"」
『そう…』
「煉獄さん、煙上さんが煙柱なられたことを列車に乗ってから知って。煉獄さん、とても喜んでいました…」
頭に杏寿郎が喜んでいる姿が浮かんだ。泣きそうなのに涙が溢れ落ちてこなかった。
『杏寿郎は強かった…そうだよね。私も煙柱になったから見習わないと…』
「Aさん」
千寿郎君と炭治郎君の悲しそうな顔が目に入る。私の目からは涙が溢れないのを心配してくれている
次の日には杏寿郎が白い布を被せられて布団の上で眠っている。信じられない光景に私は心と現実が離れていっていた。涙が出ないのを不思議に思いながら杏寿郎の傍にいていると、千寿郎君が部屋に入ってきて今日と明日のお通夜とお葬式の事を話した。
すると千寿郎くんは私に一つの櫛を渡してくれる。その櫛は前に杏寿郎と一緒に出掛けた時に見ていたいお店の櫛だった
「兄上からAさんに」
『杏寿郎が…』
「兄上にとってAさんは家族同然であり、愛している人だと。大切な人だとよく言っていました」
櫛の意味は共に寄り添いながら死ぬまで生きていこう。男性から女性に求婚の際に贈る物だ。
私はその櫛を優しく握り、杏寿郎を見た。
『杏寿郎、私櫛付けれるほど髪を結うの器用じゃない。私の愛してる人がいないとつけれないよ』
溢れなかった涙が頬を伝って流れていく。何も言わない杏寿郎に私は彼の手を握った。とても冷たい。だけど豆が潰れてゴツゴツとした大きな手
『杏寿郎っ』
私はその手を握ったまま泣いた。何度も杏寿郎の名前を呼び続けて、私の名前を呼んでくれないかと願った。だけど、その優しくて強い声は聞こえなかった
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黒マル(プロフ) - ゆきなさん» アニメの冨岡さんの速さを参考にさせて頂いてます!鬼殺隊の運動神経は凄いですよね! (2020年3月30日 20時) (レス) id: 8875ef1e2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - きさつたいって脚早いし強いですね (2020年3月30日 3時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
黒マル(プロフ) - ゆきなさん» 感想ありがとうございます!言葉が見つからず泥棒になってしまいました…。文章力をつけていかないとダメですね。お気遣いありがとうございます!更新頑張ります (2020年3月29日 15時) (レス) id: 8875ef1e2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 泥棒ではない…かな?…まぁいっか!これからも無理せずに頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年3月28日 1時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒マル | 作成日時:2020年3月14日 11時