短編集【anm】 (ページ15)

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春の休日🍎🍥🐏 ページ15

🍎
休日の前の日の夜、やる事は全て終わって後は寝るだけなのにまだ何となく寝たくなくてソファーに並んで座って他愛もない会話をしている。

「なんか甘いもの食べたいです…」
「この時間に？」

少し呆れて困ったように笑う彼

「コンビニまで散歩でもします？」
「します」

手を繋いで夜道を歩く。
彼が車道側を歩いてくれている事に気付いて少し嬉しくなる。

「暖かくなりましたねぇ」
「そうですねぇ」
「今年はどこに行きましょうかね」
「キャンプとか？」

いいですねぇ、と彼が笑う。
こういう話をすると彼が想像する少し先の未来にも私が彼の隣に居るのだと感じる事が出来て幸せだなと思う。

頬を撫でる夜風が春めいてきた。
これから先の二人の未来が穏やかで幸せなものになるように見上げた一等星に願った。

🍥
昨晩は珍しく2人の就寝時間が重なって久々に一緒のベッドで眠った。

カーテンの隙間から入り込む陽の光が柔らかくて春の訪れを感じる。
隣を向けば彼は健やかな寝息を立てて眠っている。
ふと彼のパジャマのボタンがズレている事に気がついてしまい、そっとボタンを外して直して上げていたら寝ていた筈の彼と目が合う。

「いや、これは…」

なんとなく気まずくて言い訳をするとにんまりと笑う彼。

「もぉ…Aのえっち」

彼の可愛い笑顔の破壊力と恥ずかしさで一気に耳まで熱くなる。
当の本人は寝惚けた笑顔を浮かべたかと思ったら再び規則正しい寝息を立てている。

「え？寝たの？」

私はこんなにも心臓がうるさいのに、可愛い寝顔で再び眠ってしまった彼に思わず溜め息が出てしまう。

まだ布団から出てもいないのに一気に疲れた休日の朝。

🐏
ご機嫌で鼻歌を歌いながらお昼の食器を洗う彼
それを邪魔しないように微笑ましく眺めていると彼と目が合う。

「なぁにニコニコしてんの」
「んー？歌上手だなぁと思って」
「えー、ありがとぉ」
「なんか聴いた事ない歌だった。誰の曲？」
「俺が今作ってる新曲〜」

もう一度聴きたかったけれど「歌って」と言うのは憚られて「いい曲になりそうだね」とだけ言うと嬉しそうに笑う彼。

「俺もそう思う…！褒めてくれたお礼に特別にAにだけ聴かせてあげるね」

そう言って流れる水を止めて、私のいるソファーに座りあぐらをかいて、伸びやかで楽しそうな歌声を響かせる彼
隣にいられる幸せを噛み締める穏やかな休日の午後。