【第八十七話】好奇心【鈴森 優衣】 ページ41
「あ!」と宮廷に、鈴を転がしたような声が響いた。金色のウェーブがかかった髪を揺らし、若葉色の瞳をるんるんと輝かせる少女の目線の先には、一匹の黒猫。子の少女は鈴森優衣。皇帝の跡継ぎの一人である。
頬を淡い朱に染め、堪えきれないといわんばかりの笑み。一方、猫はといえば少し迷惑そうに耳を横に折った。それに、気づいたのか優衣はううと眉根を下げた。
「……どうしようかな」
やることがなくなった優衣は辺りを見回した。あいにく、構ってくれそうな人の姿は見えずシュンと肩を落とす。どうしたものかと悩みに悩み、優衣は庭に向かった。
脱走以外の目的の何者でもない。優衣は好奇心旺盛である。そのため、よく宮廷からひょっといなくなってしまうのだ。手段は……恐らく木上りからの脱走であろう。
年頃の娘としてはしたないと、周りは口をそろえて言うがそんなの好奇心旺盛な彼女には意味をなさない。
優衣が木に手をかけたとき、男の会話が聞こえ優衣は目を丸め思わずひょっと茂みに身を潜めた。隙間から目を覗かせれば、無精髭の見回りの兵だろう。何か話し込んでいるようだった。
「今年は、どうするのかねえ。神訊祭」
「ああ、そうだなぁ。踊り子は誰にすんだか」
「衣装も繕わねばいけないからなぁ」
「まあ、楽しみにしておくか。新撰組ならどうにかしてくれるだろう」
それに優衣の目は先ほどの輝きを取り戻した。神訊祭の踊り子のい、衣装を……繕う!?
神訊祭は説明したとおり神の光臨を祝う宴。その中で、催される踊り子の踊りは神訊祭でも有名なもの。それは神訊祭を見たことのない優衣でも知っていた。
きっと踊り子は綺麗な人なのだろう。そんな人が、自分の繕った服を着て舞ってくれたら……。優衣はかつてないほどの、喜びに跳ね上がる。それと同時に本日の目標が決定した。
着てくれるかは分からないが踊り子の服を繕うための布を町から調達することである。
間もなく、優衣が脱走したのは言うまでもない。
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蛇庵(りあん)(プロフ) - 続編いきました! (2016年5月3日 20時) (レス) id: 09ec081b29 (このIDを非表示/違反報告)
蛇庵(りあん)(プロフ) - しのっちさん» わかった!続編いくね。 (2016年5月3日 20時) (レス) id: 09ec081b29 (このIDを非表示/違反報告)
しのっち(プロフ) - 蛇庵(りあん)さん» ……りあん、そろそろ続編にいった方が良いかもぉ…… (2016年5月3日 20時) (レス) id: 56a4443702 (このIDを非表示/違反報告)
しのっち(プロフ) - ……手直しする…… (2016年5月3日 20時) (レス) id: 56a4443702 (このIDを非表示/違反報告)
しのっち(プロフ) - ……終わった…… (2016年5月3日 20時) (レス) id: 56a4443702 (このIDを非表示/違反報告)
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