【募集企画】新撰組達よ、集れ。そして戦え。【小説２】 (ページ39)

今日:7 hit、昨日:10 hit、合計:13,566 hit

【第八十五話】解放【相樂千代、佐伯朔】ページ39

.

｢…………うっ…く……っ…｣

そこにへたりと座って泣きじゃくっているのは。

紛れもなく、相樂千代。

あしの妹。

｢日之国の、尻拭いは………あしがやるぞな。だから………新撰組の皆さん。どうか、前だけを見て、突き進んでくれぞな…｣

それが、冥王の役目。

後始末はあしにやらせてもらうぞな。

｢だから、千代を責めるのは…やめてほしいぞな。……揺らぐ人格をもとに戻すのに時間をもっと費やすだけになる…｣

でも。

あしは、嬉しかった。

あんなに厳しく、感情の起伏を封印したはずなのに、

たった五年離れただけで、その壁を崩壊させたのだから。

新撰組は……千代は凄い。

今までの中でこんなやつ、初めてみた。

そして、あしは目深にフードを被ってこう告げたを

｢新撰組の皆さん。先程も言いましたが、ただただ、前を見て突き進んでくれぞな。後ろから見守るのが、兄の役目だから…｣

頭を下げるなんて、性にも合わんがここはいたしかたない。

｢朔兄様……離れたくない……｣

その顔には、別れを否定する涙を流す千代。

｢安心、するぞな。……あしは、決して離れないぞな。千代を置いて消えないぞな…｣

ただ、千代と、暗殺部隊と、この寺子屋のある山を守るのみ。

｢空は…繋がっているのだから。新撰組へ戻るぞな。ホラ、皆が待ってる…から｣

一匹の、美しい蝶を……闇の籠から、解き放つとき。

｢お前は、化け物じゃあないぞな。……美しい一匹の蝶ぞな…｣

最後に。

あしの耳にピアスとしてつけていた、蝶の金飾りを取り、

空へ放る。

｢ほら、蝶々はもう自由ぞな。…行ってらっしゃい。辛くなったら、またおいで。その時はまた、羽を綺麗にしてあげるぞな…｣

.