【募集企画】新撰組達よ、集れ。そして戦え。【小説２】 (ページ29)

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【第七十五話】紋様の意味【桜川雅】ページ29

花蝶黒紫は珍しいことに、少々焦っていた

その焦りは、桜川雅に関係している

雅を隠れ家に寝かせた時に感じた違和感＿＿

その違和感の正体を、黒紫は嫌でも分かってしまった

雅が足下まで来たときに見えた、両腕にまで広がった紋様

(こりゃあ、隠れ家を変える必要があるな)

己の足下でペタリと座り込み、今だふらふらするのであろう体を
黒紫の足に抱きつくことで安定させている雅を見て、黒紫は雅に気づかれない様に小さく溜息をついた

桜川雅の体に描かれている紋様には意味がある

そもそも、桜川雅は【普通の子供】などでは無い
桜川雅は、過去に神隠しされた子供である
つまりは【神の愛し子】なのだ

雅の紋様は【神の愛し子】であることを証明する【神からの烙印】であった

普段ならば、心臓部から背中にかけて広がっているだけだが
背中から両腕にまで広がっているということは、雅に【烙印】を押した張本人か
はたまた、その張本人の使いの力(または力の欠片)がこの隠れ家の近くに強く残っていることになる

雅は助け出した時に【黒紫が雅を助け出す前の記憶】を無くしてしまった

というより、その張本人が雅の記憶を封印したのだ

これは、「雅が記憶を取り戻したら、連れ戻して二度と外界と関わらせない」という意味も込められた、あちらなりの雅へ与えた自由時間なのだ

そんな裏事情を唯一知っている黒紫は、一刻も早く別の隠れ家に移った方が良いと考えたのだ

紋様はあちら側の力に反応し、広がっている

(できるだけ遠ざけにゃあな)

紋様が広がる程、雅が『あちらの世界』に近くなっている証拠

紋様が背中から動かなければ、『あちらの世界』から遠ざかっている証拠だ

(雅に思い出して貰っちゃあ、こちらが困る)

――なにせ雅には、紅緋に武器を取って貰う為のきっかけになって貰うのだから――

そんなことを黒紫が考えていることなど露知らず、雅は黒紫の足下で安心した様に再び眠りについた