【第六十話】死神が望むのは【赤水 蓮】 ページ14
ぼぅ……としながら蓮は考える。ああ、血の匂いはここからだったのかと。転がる屍は目を剥き、生きてたものとは思えなかった。
目の前に立つ相樂 千代の表情はどこか虚ろで悲しげだった。小さく溜息をつき、蓮は彼女に近寄った。
「……やめたほうがいいですよ。千代さん」
「なんで?」
殺めることに快楽を得た人間。それほどたちが悪いものはいないことを蓮は知っていた。ある者は自分の過ちに気づき殺めることをやめたが、ある者は快楽を満たすため未だに人を殺め続けている。同じ人を殺めたものだが……罪を認識した者たちより、無論認識できない者たちの方が厄介だ。
「……彼がそれを望んでいないからです」
意味が分からないというように千代は顔をしかめた。まあ、そりゃあそうだろう。蓮は、韓紅の無の瞳を開く。
「紅緋はそれを望みません。彼が求むのは陽と陰の調和。人を殺めることがそれに近づくなど到底私は思いません」
紅緋の名を出した瞬間、千代の表情が一瞬揺らいだ。彼女にとって、紅緋は大切な存在なのだろうと薄々前から気づいていた蓮は戸惑う彗をよそに続ける。
「……それに、そこに転がっている屍は、果たして全て黒いものなのでしょうか」
「は?」
「どういうことだ」
蓮の発言に千代と彗は顔を歪めた。しかし、それをさして気にしていないように蓮は相変わらず涼しい顔で続ける。
「その昔起きた戦に出た人間たちは皆が皆、私利私欲のために戦ってたか……ということを聞きたいのです。恐らく、戦に出た人の中には家族や待ち人のため挑んだ人間もいるでしょう。この中にもそのような人はいるでしょうね……私は思うのです。この死んだ人を待つ家族はこれから先どうなるのかと」
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蛇庵(りあん)(プロフ) - 続編いきました! (2016年5月3日 20時) (レス) id: 09ec081b29 (このIDを非表示/違反報告)
蛇庵(りあん)(プロフ) - しのっちさん» わかった!続編いくね。 (2016年5月3日 20時) (レス) id: 09ec081b29 (このIDを非表示/違反報告)
しのっち(プロフ) - 蛇庵(りあん)さん» ……りあん、そろそろ続編にいった方が良いかもぉ…… (2016年5月3日 20時) (レス) id: 56a4443702 (このIDを非表示/違反報告)
しのっち(プロフ) - ……手直しする…… (2016年5月3日 20時) (レス) id: 56a4443702 (このIDを非表示/違反報告)
しのっち(プロフ) - ……終わった…… (2016年5月3日 20時) (レス) id: 56a4443702 (このIDを非表示/違反報告)
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