怒声 ページ16
「未成年をこの時間に、尚且つこの天候で帰すにはいかねぇ。補導されるぞ。」
そしたらお前の親御さんに連絡いっちまうなぁ。そしたら怒られんじゃねぇの?とフライパンから目を離すことなく仗助に告げた。その言葉に仗助はぐっと言葉を紡ぐことが出来ない。
「ほら、早く連絡入れてやんな。」
「アオのことは、なんて言えば。」
「友達の親。」
友達ん家に遊びに来たら雨が酷くて帰れないって言えばいいだろ。さも当たり前かのように言ったアオの顔を伺いみることが出来なかった仗助は知る由もない。そのアオの顔が不安げに歪んでいることなんて。
仗助は恐る恐る家の電話番号をプッシュし、受話器を耳に当てた。無機質なコール音が耳元で鳴り響く。
数分近く待ってもう出ないのではと半ば強引に切ろうとした時、やや苛立った女の、仗助の母である東方朋子の声が「もしもし」と言った。
「あ、母さ、」
東方朋子は怒ると恐ろしい母である。女は誰しも怒ると怖いと言われているが仗助は朋子は特別怖いと思っている。
案の定怒声が脳天を突き破る様に響いた。
『仗助!あんたどこほっつき歩いてんのよ!!!!』
「ごめん、母さん。」
仗助は為す術もなく謝るしかなくなってしまった。撃沈とも言えようその状況は、仗助の平均よりかは大きいその体を縮こまらせるのにはちょうど良かった。
これではダメだ。とアオは思ったのか、その仗助の手からするりと受話器を受け取り、その耳に当てた。
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作者名:伊達狐 | 作成日時:2019年2月2日 23時