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湊さんは私がいないことを知ると、すぐさまうちに来て。
『Aちゃんが、来たがってたんです。』
こう言えば、両親はあっさりと信じる。
だけど、泉だけは信じなかった。
いつもみたいに、強い瞳で私を引き戻してくる。
『泉、Aが行きたいって言ってるのよ。』
『そうだ泉。行かせてやりなさい。』
両親が、私と泉の手を離し、私は湊さんのところへまた、戻らされた。
『おかえり。』
その一言で、私ははじめて、恐ろしい、と、感じた。
そのときはただ、恐怖しかなかったんだと思う。湊さんのところから逃げて、泉のところに行った。
そうして、私は泉に”助けられた”のだ。
両親は、私が戻ってきた、と勘違いしていただけで、湊さんのことは気にしてもいなかった。
後から聞くと、湊さんはどうやら、私に依存していたらしい。
私だけが、褒めてくれるから、という理由で。執着していたんだって。
けど今ではもうすっかり会っていなくて、記憶も薄れて、私の日常から湊さんのことは消えていってたのに。
「……っああああ!?」
…今、記憶も、湊さんにされたことも、すべて、すべてが私の中を駆け巡った。
思い出したくない、記憶。
両親も、少しは疑ってほしかった。
そうしたら、今ここで、私が思い出すこともなかったのに。
私はその場に崩れ落ち、ただひたすらに悔しくて、ぐっ、と強く、手を握った。
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あづにゃん(プロフ) - とても面白かったです!!これからも頑張って下さい♪ (2016年2月20日 17時) (レス) id: 77a53820e2 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃(プロフ) - 続き楽しみにしてますー! (2016年2月18日 22時) (レス) id: 4d959f0cfa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睦月 | 作成日時:2016年2月16日 14時