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やっと夏休み。
学校は辞めた。辞めさせられたとも言う。
真依と仲良くなった。
自室で武器を眺めていたら後ろから声がかかった。
「ねえ、いつも何してるの?」
振り向けば私と同じく落ちこぼれ扱いを受けている双子の片割れ、禪院真依だった。
名前と顔は知っていたが話したのは初めてかもしれない。
学校に通えなくなった挙げ句、貴重な術式持ちを殺害した私に近付く子供も大人もいなかった。
『呪具を見てるの。あなたも見る?』
「...暇なの?」
ポツリと聞かれる。
暇だ。
誰も来ない、何も起こらないから。
『暇よ。お名前はなんていうの?私は禪院雛乃。』
「禪院真依。」
名前を聞くとポツリと呟いて教えてくれた。
お気に入りの呪具を教えたりしながら倉庫で遊ぶのが小さい頃の楽しみだった。
「...ここにある呪具って名前ないの?」
『あるとは思うのだけれど...分からないわ。』
刀を少し重そうに持ちながら真依が聞いてくる。
誰も教えてくれないのだから勿論分かったものではない。
近付かれすらしないのだから。
「そう言えば、今度うちで会合あるらしいよ。」
扇を振り回して遊びながら真依が言う。
『そうなの?』
当たり前だが知らなかった。
真依は何故知っているのだろうか。
「盗み聞きした。」
ピタリと動きを止め、もう時間だから、と扇を手早く倉庫に直し真依は行ってしまった。
自分に近付いて来てくれた事が嬉しくて仕方がなかった。
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