二章:これが俗に言う青春? 禪院雛乃 ページ12
会合に来てみたは良いものの何をすれば良いか分からない。
あんな事をしてしまったので肩身も狭い。
取り敢えず縁側に出てみる。
あのジジイどもに似合わない程綺麗に咲き誇る桜はやはり好きだ。
『真依もいない...帰りたいなぁ...』
落ちてくる花弁を拾ったり拾った花弁で模様を作って遊んだりしていると後ろから声をかけられる。
「あの...とうさ...当主様がいらっしゃる所って何処か聞いてもいいですか?」
美しい少女少年、どちらともつかない年の近そうな子供が居た。
艷やかな黒髪に伏せられた目を縁取る美しく長い睫毛。
『...当主様...と言われましても...禪院、五条、加茂のどの当主様でしょうか?』
父様、と言いかけていた事からどうやら当主の息子らしい。
「あ...えっと...加茂家の当主様です。」
あぁ...あの側室の子供を云々の...と思い出す。
どうやらこの少年(自分も少女と言える年齢だが)がその側室の子供らしかった。
『それでしたらそちらの部屋ですよ。分かりますか?良ければご案内しますよ。』
ニコリと笑えば少し安心したように微笑む目の前の少年。
「有難う御座います!!」
部屋へ向かう途中、まだ彼の名前を尋ねていないことに気が付く。
『...貴方のお名前は?私は雛乃です。』
「か、...憲紀...です。」
名字は名乗らなかった。
麗に失礼だと思ったから。姉を殺した張本人に同じ名字を名乗ってほしくない筈だ。
相手もそれを察したのか名乗らなかった。
のりとし、とは何とも可哀想な名前だと、そう思った。
どれだけ憎くとも呪術界の汚点と同じ名前にしなくても...と。
『さて。付きましたよ。おや...不満そうな顔ですね。名字を知りたかったのですか?』
振り返り、彼の顔を見れば少し不満げな顔をしていた。
どうやら名字が知りたいらしい。
「え...?!あ...いやそういう訳じゃ...」
『ふふ。きっと分かりますよ。加茂憲紀様。』
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