狭間の修行__玖 ページ39
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エンキのスパルタ修行始まってから数刻が過ぎ日も傾いて来た時だった。真摯に修行に向き合うAの姿を見ながら、彼は後ろめたさがある様にこう告げる
『御前は…外であれだけ事実を聞いておきながら私達にはそれ以上を追及しないのだな』
「…………」
それは「聞いて欲しい」のか
ただの宇宙人の純粋な疑問なのか
振るう手を止めて黒曜切と白曜切を鞘に収めたAは沈黙した
…確かにAは「なんでも知りたい」性分だ
誰もが見れる表の部分だけでなく裏の裏の部分まで全てを知りたい。それはトリップした後も変わらないし、「烙曜」の事や「何故あれだけ「勇んで戦う者」が絶対的信頼を得てる」のか「二人の言う敵は「烙曜」に居るのか」「彼等が選んだ人間達の矛盾は?」……問い質すと切りがない
(目の前には何でも知ってるであろう宇宙人が居る…)
調べれば答えを出してくれる便利なコンピュータが目の前にあるようなものだ
どんな検索エンジンよりも正確で便利な解答をサイトのトップに出してくれるであろう
今、自分にはその選択も資格もある
手を伸ばせば届く距離に世の全ての真実がそこにはあった
(…あたしは…識りたい…?)
自分は、あたしは、識りたいか?
こんな簡単に重要な事をそんなすぐ?
__「解らない事があったら?」「自分で調べなさい…」「よろしい」___
「……」
幼い頃、解らない事があると母親に聞いていた
だが返ってくるのは解答ではなく「己の手で調べろ」と言う答え
今更ながらそんな懐かしい事を思い出す
けれどそれはちゃんとAの根底に留まってくれている
だから、
「誰かから聞く話にはその人の「偏見」が入ってて「見るべき真実」が解らなくなる。それって自分の目で実際に見た事実の方がよっぽど価値があるよね?」
『御前…』
「聞いて欲しくてもあたしは聞かないから
真実は自分の手で調べて知って理解する…"誰の意見にも偏見にも左右されない真実"をあの世界で生きて行きながら見出してみせるよ」
例えそれが開けてはならない禁断の箱だったとしても
知って自分が絶望する様なものだとしても
これはAの人生だから
課せられた使命の様なものだとそう信じてるから…どんな怪物が出ても受け入れてみせるんだ
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作者名:モノクロ | 作成日時:2021年11月25日 23時