御前の為ならば 46ねこ☆KING★さんリク ページ31
今、僕の頭の中はごちゃごちゃしていた。ごちゃごちゃとしか言い表す事ができない。幼稚すぎるが。
Aと居ると胸の奥がきゅう、と苦しくなるのだが、その苦しさが酷く愛おしい。
笑顔をずっと見ていたい。
時々、Aを抱きしめたくなる衝動にかられる。
かわいい、うつくしい、などと以前の僕ならば思いつきもしない言葉が、Aの前だと次から次へと溢れてくる。
これはなんだろうか。
毎日毎日そんなことばかり考えていた。だからこそかもしれぬ。
大型貨物車の音に気づかなかったのは。
クラクションが鳴り、そこで気づく。しかしもう目前に貨物車のナンバープレートがあった。衝撃は異能も発動していなかった故もろに衝突した。僕の脆弱な体躯の所為で二十メートルも飛ばされ、コンクリートにたたきつけられた。激痛で声も出ぬ。
芥川「っ…………く、……」
貨物車はそのまま何事もなかったかのように走り去っていった。野次馬がいなかったのは、ポートマフィアが所有する港だったかというものの、二時間ほど動く力さえも、異能を発動させる力も失ってしまい、二時間程放置された。じりじりと焼きつく熱さが僕の脳までも犯す。脳裏にあるのはAだけだ。視野に入る腕は可笑しな方向に関節が曲がっており、どれだけやっても力さえ入らなかった。呼吸が浅いのが自分でもわかる。
芥川「く、く、く……ごぼぇぁ」
自嘲の次は吐血。あぁ、なんとも間抜けな怪我の仕方だろうか。
戦果を求め続けた僕の死に方が、これというのか。
これはこれでいいのかもしれぬ。
やたらと体が重くなり、太陽の攻撃を感じなくなったが、冷たくはない。瞼が重い。そろそろ閉じてやろう、と思った。
こつ、こっつ、と足音が聞こえてきた。そして、僕の前でとまった。上を見上げる気力はないが、誰かはわかっていた。
「はぁ、馬鹿じゃないのぉ〜?」
綿飴のような甘ったるく、ベタベタとした声。キャハハと狂ったように笑うも本人には正常なのだ。Aはすとん、と僕の前にかがむと、優しく僕を起こした。動かすな、と言いたいが声が出ない。
「ちょっと待ってて」
Aは僕の頭を自分の膝にそっと乗せて、ポケットから小さく折りたたまれた和紙を取り出した。それをバッと広げる。ずいぶんと大きくなった。その和紙に、ちょちょっと書きこむと、たちまち和紙は車に変わった。
「さ、帰ろうか」
声がつぶれた僕に笑いかけ、車に乗せてその場を去った。
END
46ねこ☆KING★さん、ありがとうございました。→←眼鏡泥棒
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氷月 - あんこさん、お返事遅くなってしまってごめんなさい!ちょっとパソコンを直しておりました。面白いといってくださって感謝感激です(泣)安吾さんとのハッピーエンドですね!了解しました (2017年9月22日 17時) (レス) id: d02a9d7f01 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - はじめまして、あんこといいます('-'。)もしよかったら、リクエストしたいのですが、安吾さんと夢主ちゃんのハッピーエンドのお話をお願いします('ー ' *)ちらっといろいろなお話も読ませてもらったのですが、面白かったです(*^-^*) (2017年8月19日 8時) (レス) id: 6f6d03f938 (このIDを非表示/違反報告)
氷月 - 嬉しいです!こちらこそですー! (2017年6月26日 0時) (レス) id: d02a9d7f01 (このIDを非表示/違反報告)
舞 - 書いて下さり、ありがとうございます。やられっぱなしでは無い夢主ちゃんがいいですね! (2017年6月20日 21時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
氷月 - わかりました!了解です! (2017年6月17日 12時) (レス) id: d02a9d7f01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:妃村塩李 | 作成日時:2016年5月10日 18時