蔓日々草の思い出 ページ1
放課後のチャイム。
俺が慌てて外に出ようとする時、誰かに呼び止められた。
蝦夷菊 青葉だ。
「よう青葉、なんか用？」
『楓、今日時間ある？あるならまた釣りしに行こうよ！』
白神は考えた。
確か、神宿神社に参拝の予定があったから、今日は遊んじゃダメって言われたっけ…
まあ、いいか。
「いいよ。でも、用事あるから2時には帰んないとダメなんだよ」
『あ、もしかして参拝？』
雫は鋭い。
「まあ、そんなところかなぁ」
妙な気をきかせたくないので、曖昧に濁しておいた。
家に帰ると、姉の紫苑がキッチンで料理をしている。
「俺友達と遊んでくるから。参拝の20分前には帰る。」
はいはーい、とキッチンから声がする。
それに続いて、今日は大事な祭儀なんだから、忘れないでねー！と言われる。
「全く、子供じゃあるまいし…」
そう、俺は子供ではない。
いや、年や中身としては十二分に子供なのだが、この村の基準では、俺は大人ということになっている
のだ。
まあそれは、俺の病気が関係しており、話すと長くなるので、また今度にしよう。
釣りをしていた時、ふと、青葉が言い出した。
『…なんで、楓はーーー』
そう言いかけ、青葉は、口を動かすのを止める。
それから、うつむきながらごめん、と呟いた。
俺は青葉の言いたいことを察し、答えた。
「分からないよ。俺が出来ることは、1日1日を大切にすることだけだから…」
それを言うと、青葉はうなだれたような顔をする。
俺は、少し微笑んで見せる。
すると、青葉は落ち着いたようで、こくん、と一回頷いた。
別れ際、青葉は
『楓が助かる方法、俺も探す。』
と言い、俺は、
「ありがとうな。」
とだけ言った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒い雨水 | 作成日時：2021年4月8日 23時
