60匹砕ける。【慢心】 ページ10
忽然とどこからか『戻ってきた』喑茶の教授は、戻ってくるなり
今の今まで激しい運動をしていたかのように、膝に手を当てて、肩で息をする。
『…これで、全員。』
赤の有能から始めた、一人一人、懇切丁寧に『記憶』を消す作業も、今先程の黒の総統で終わりを告げた。
少なくとも喑茶の教授はそう
晴れやかさを微塵も感じさせない厳しい顔つきに浮かぶ嫌な汗を手の甲で雑に拭い、
喑茶の教授はその場に腰を下ろした。
『これで、楽になれるはずや。』
最後の最後、彼らが総統には、
『エーミール』が今現在いる場所の答えになりかねないほどの大ヒントは与えてしまったが……
──まぁ、あの空間内の記憶は保持できへんし。
──全員の記憶消したから、完全に『エーミール』は忘れ去られたはずやし。
──まさか、『エーミール』が探されるはずあるまい
と。
先程黒の総統に『宣戦布告』されたことに対しても、
『記憶消されたのに奪い返すなんて絶対できへん』と慢心して、
喑茶の教授はそのまま床に寝転んだ。
目を閉じる。
閉じた先に見えるのは、暗闇のはず。
……ただ彼は、その暗闇の中に、けたたましいばかりの『悪意』を見た。
「気に食わない」、ただその一心で放たれた、当人の心を残酷に突き刺し掻き乱すような罵詈雑言が、次々と目に浮かぶ。
「自分の意見が正しいのだ」と信じてやまない、だから本人の目に届かぬよう隠れすらもしない、厚顔無恥な誹謗中傷が浮かんでは消える。
…大きなため息ひとつ、顔を苦々しく歪めて、
喑茶の教授はのそりと起き上がった。
『……こんな状態じゃ、寝ることも叶わんなほんまに…』
忌々しく呟いて、クマの酷い顔を手で覆う。
……喑茶の教授は、ここのところずっと上手く寝れていない。
原因は明確、『エーミール』の消去に従い、この世から消去されはしたものの、
ずっと『彼の記憶』にこびりついている『顔のない国民たち』の悪意に塗れた声。
『エーミール』に関する記憶を彼が保持している以上、その声も永久に彼の心に付随して、
思い起こされる度に彼の心を酷く掻き乱し、傷つけ、病ませてしまう。
喑茶の教授は、気づいてはいた。
──自分からも、『エーミール』の記憶を消さなければ、自身に真の安寧は訪れないことを。
ただ、自身の記憶の消去にはどうにも踏み切れないまま──喑茶の教授は静かに蹲った。
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きんにくふぇち@他力本願。(プロフ) - エミさん声出し記念7周年の翌日にこれみるとかどんな奇跡だよ…すき… (12月30日 1時) (
レス) @page28 id: 5ebe7ae459 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸 - すごい…感動出来る……この小説をきっかけにemさんのアンチスレを実際に見てみました…いい意味で生々しいというか、心に響く作品ですね…応援してます！！ (2023年4月5日 14時) (レス) @page24 id: 144a6ab78e (このIDを非表示/違反報告)
アルト - 新しい話出てる！久しぶりだぁ…！嬉しいです！！ (2023年4月1日 20時) (レス) @page23 id: 55059b1f92 (このIDを非表示/違反報告)
ひるねる - コメント失礼します！世界観？というか設定？好きです！（語彙力消失）やっぱりこのダサいくらいのエミさんがエミさんやな！（決して本人をバカにしている訳ではありません）更新頑張ってください！(*´∀｀*)尸" (2023年1月23日 3時) (レス) @page22 id: 7cd55c346b (このIDを非表示/違反報告)
森の民(プロフ) - 続編だぁ！こんなに素敵な小説をいっぱい見れて幸せです〜！ (2022年8月11日 18時) (レス) @page1 id: 6c1a629d1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マンゴスチン | 作成日時：2022年8月11日 14時
