56匹砕ける。【現実:赤】 ページ6
──『「■■■という人物を、探し出して欲しい」』
シッマの捏ねに捏ねた話で、『エーミール』という人物を『
グルさんから、そんな頼みをされた。
■■■。
聞き覚えがあるような、ないような名前。
タイミング的に、皆が忘れてしまった(らしい)『エーミール』に関連しているんだろう、と察して、二つ返事で引き受けた。
各自仕事の合間などの隙間時間にその名前の主を探して、早1週間。
オスマンから、『■■■を見つけた』と連絡が来た。
場所は───
───
─
『忘れた』全員で集まると周りの迷惑になるから、ということで。
集まったのは、俺とオスマン、2人だけ。
互いに目を合わせ、頷きあって。
…『206号室』と書かれた扉に手をかけて、開ける。
──開けた。
開けた場所へ、歩を進める。やけにやかましい鼓動と共に、
1歩。1歩。確かに前へ。
1歩。1歩。着実に先へ。
1歩。1歩。1歩。1歩。1歩。
……歩いた先の、白く清潔なベッドの上に、■■■はいた。
…その姿に、絶句する。
「病院の人は、なんや言葉濁しとったけど。
俺、ちょっと…色々と調べて、何があったか、知ってるで。」
隣にいたオスマンから、そんなセリフが飛び出る。
あんな、そのな、と、酷く言いづらそうにしながら、次のセリフを口にする。
「……この人、『飛び降り』したらしいわ。」
「…ああ、それで。」
体の各所に包帯を巻いたまま、点滴を刺したまま、目を開くこともなく、呼吸ばかりを続ける■■■の痛々しい様を見やる。
『飛び降り』。
どうやら、生きることをやめにしたかったらしい、この人は。
運が良かったのか、悪運が強かったのか、『未遂』に終わりはしたけれど。
もうそれ以上、生きることが辛かったらしい、ということだけは、何となく、分かって。
……どうして、そんな。
そんな、そんな、
「どうしてそんなになるまで俺らには何も言わなかったんや、『エミさん』……」
「ん………、ん?トントン、なあ」
半ば無意識に俺の口から零れ落ちた言葉に、オスマンが敏く反応する。
「…何で今『エミさん』って言った?」
「……俺『エミさん』なんて言うたか?」
「言った、絶対言った!
…ッ、なぁ、トントン、多分、もしかして……いや、いや絶対にこの人が、
俺らの探しとる『エーミール』やわ」
何、言うとんねん、お前。
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きんにくふぇち@他力本願。(プロフ) - エミさん声出し記念7周年の翌日にこれみるとかどんな奇跡だよ…すき… (12月30日 1時) (レス) @page28 id: 5ebe7ae459 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸 - すごい…感動出来る……この小説をきっかけにemさんのアンチスレを実際に見てみました…いい意味で生々しいというか、心に響く作品ですね…応援してます!! (2023年4月5日 14時) (レス) @page24 id: 144a6ab78e (このIDを非表示/違反報告)
アルト - 新しい話出てる!久しぶりだぁ…!嬉しいです!! (2023年4月1日 20時) (レス) @page23 id: 55059b1f92 (このIDを非表示/違反報告)
ひるねる - コメント失礼します!世界観?というか設定?好きです!(語彙力消失)やっぱりこのダサいくらいのエミさんがエミさんやな!(決して本人をバカにしている訳ではありません)更新頑張ってください!(*´∀`*)尸" (2023年1月23日 3時) (レス) @page22 id: 7cd55c346b (このIDを非表示/違反報告)
森の民(プロフ) - 続編だぁ!こんなに素敵な小説をいっぱい見れて幸せです〜! (2022年8月11日 18時) (レス) @page1 id: 6c1a629d1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マンゴスチン | 作成日時:2022年8月11日 14時