8匹砕ける。 ページ8
「エミさ」
「…戸惑っている振りは必要ないですよ、ロボロさん。
ただ貴方が思うままに喜んでソレを振り下ろしてください。」
なん、やって？
「俺が、エミさん殺せて、喜ぶ、と、思ってんのか」
「…ええ、それが皆様の総意でしょう？」
斧を必死に押さえる。
彼を殺さぬように、また、笑いあって活動が続けられるように…
すると、押さえる手に、無数の手が重なり……押さえている手が斧から剥がされていく。
「ｯなにしとんねんお前らｧｯ！！！」
「お前ら、なんて言ったら駄目やないですか。
大事な大事な視聴者様、顔のない国民様方に。」
「でもコイツらエミさんを殺させようとしｯ」
俺の叫びを邪魔するかのように、
目の前に、無数の呟きが、スレッドが表示される。
所謂『アンチ』たちが、ひたすらにエミさんを貶して罵って、彼の退去を望んでいるコメントが、目の前に溢れる。
あまりにも酷い言葉の羅列に、思わず顔を顰めた。
「……言ったでしょう？私の消滅は皆様の総意なんです。」
エミさんが、いやに綺麗に笑った。
斧から、完全に手が離れる。
「嫌や」
「ロボロさんはええなぁ、口も上手くてゲームでも上手く立ち回れて…
ホビット族、筋トレ、天の声…。
誰も不快にさせない、矛盾を生まない確実な要素があって。」
足が勝手に動き出す。
手に握られた斧が、思い出話をするかのように暖かに笑んでいるエミさんを狙う。
「嫌や…！！」
「…あ、笑点では色々弄ってしまってごめんなさいね。
あと…生放送でも度々迷惑をお掛けしましたっけ。
きっと、何もかもが不快だったでしょう？」
そんなことない、そんなことないでエミさん、そういいたいのに、
口からは、嗚咽しか出てこなくて。
「…本当に楽しかったです、今までありがとうございました。」
柔らかに笑む、その顔に、その頭に、斧が、
「嫌やぁああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああ！！！！！！！」
……ぐしゃり、と、振り下ろされて。
スイカみたいに、真っ赤な中身を撒き散らして。
エミさんは、割れてしまった。
俺が、割ってしまった。
後悔しか残ってないのに、今すぐ残骸に駆け寄りたいのに、また、手が、俺の邪魔をして、
視界を、遮って…そのまま、意識が落ちた。
『でも貴方には止められなかった、悲しいことに。』
やけに達観した声が、虚しく響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
慧羽 - この話ヤバい…めちゃくちゃ泣きました。今ちょうど、好きなユーチューバーがアンチのせいで辞めてしまって、ちょうどアンチにとても怒ってたので、本当に泣きました…。神すぎる作品を作って頂き、ありがとうございます!! (2022年8月11日 20時) (
レス) @page50 id: 55059b1f92 (このIDを非表示/違反報告)
森の民(プロフ) - 半分ファンタジーで、半分は現実でも起こることなんだなぁ。一気に読みました。神小説ありがとうございます。 (2022年8月10日 22時) (レス) @page45 id: 6c1a629d1f (このIDを非表示/違反報告)
ふかふかおふとん??(プロフ) - 神ですね涙がとまらない (2022年8月10日 20時) (レス) id: 1455eebfad (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ双子(プロフ) - 何この作品⋯!!神すぎる⋯泣きました。涙腺崩壊です⋯。本当アンチとか群れないとなんにもできないくせにいらないですよね⋯。本当この作品神すぎます。好きです (2022年8月10日 15時) (レス) @page14 id: b167e19be9 (このIDを非表示/違反報告)
天天(プロフ) - 泣いた。今もスレとかあるからマジでスレ消したい。アンチとかなんであるんだろなぁ… 自分が叩かれてたらって思ったらゾッとするはずなのに。個性じゃん。この作品マジで神ですね。好きです（唐突） (2022年8月10日 14時) (レス) id: bc837922a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マンゴスチン | 作成日時：2022年8月8日 7時
