【d!】教授消滅事変

36匹砕ける。 ページ36

──『「エミさんそれでええんか、

折角グルさんに手を差し伸ばされて入った此処を、

そんなくだらん理由で去ってもええんか」』



信じられない、という顔をしたトントンさんを思い出す。


……本当は、去りたくない。

誰に何を言われようが、ずっと皆と一緒にいたい。





──『「俺が、エミさん殺せて、喜ぶ、と、思ってんのか」』



斧を振りかざしそうになる体を必死に抑えながらそう聞いてきたロボロさんを思い出す。


……そんなわけない。

皆は、私をよく弄りはするけど(貶しもするけど)、ゲームでは嬉々として相手を倒しに行くけど、

仲間を本当に殺してしまうことを喜ぶような、そんな薄情で残忍な人間じゃない。





──『「今の動画だって、エーミールのいる動画だって、面白いって、思い返して」』



過酷な労働を終えたばかりの疲れきった状態で、戸惑いながらもそう擁護してくれたひとらんらんさんを思い出す。


……大丈夫、そう思い返せる。

なんだかんだ、嫌いじゃないんだ自分のことは。

これはまずかったな、と反省する場面も多いけど、やるなぁ自分、と褒めてやりたい場面だって沢山あるんだ。





──『「…色んな対処法知ってるはずなのになぁ？！

教授は、消滅しか知らへんのか！！」』



どこか泣き出しそうな顔をしながら、そう煽ってきたチーノくんを思い出す。


……そう、私は、俺は、知っている。

この状況を打開する術を。

『消滅』を取り下げて、皆の元に帰れる術を。

だけど、『知ってる』と『できる』は一直線上にはなくって。





──『「誰よりも『エーミール』の帰りを望んでるのは、エーミールのクセに。」』



憐憫と慈愛を浮かべながら、そう事実を突きつけてきたしんぺいさんを思い出す。


……全く、その通り。

俺が1番、あの場所に帰りたい。

こんなことやめて、奪ったもの全部戻して、

例え許されなくっても、「お騒がせしました」なんて笑いながら、皆の元へ帰りたい。





──『「常識人装った、正論じみた批判が何度来たって笑って皆とゲームができたエーミールはどこいったん？」』



あくまでも冷静に、まっすぐこちらを見つめながらそう問うてきたオスマンさんを思い出す。


……ほんまに、どこいったんやろな。

今までは、度重なる批判に落ち込みはすれど、それでも頑張ろうと、己を鼓舞できたのに。

こんなこと、絶対せんかったのに。

どこで歯車が狂ってしもたんやろな。

…今の俺には何も分からん。

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