4匹砕ける。 ページ4
「な、に言ってんねんエミさん」
「私は貴方が嫌う無能で──
PSも上がらなければ特筆すべき技能がある訳でもない、
唯一の取り柄の知識すら、ゲームの中では役立てられない。
そもそも、『ゲームの趣旨を理解できてない』らしいんです、私。」
いやに、綺麗に笑む。
「誰も言うてへんやろ、そんなこと。」
「いいえ、言われてますよ、ハッキリと。」
凛とした声と共に突然複数の弓が現れた。
そのどれもが限界まで振り絞られて、全てがエミさんを狙っている。
「『顔のない国民達』が、教えてくれました。
私の愚かさを。私の不要さを。私の罪を。」
突然、目の前に沢山のコメントが現れる。
そのどれもが、エミさんを非難するもので、エミさんの消失を望むもので。
「ほら、こんなに私は消えることを望まれてるんです。」
泣きそうな声でも、怒りを含んだ声でもない。
「でも私、この方達が言うように『神経が図太い』ので、
どれだけ酷く言われても貴方たちと一緒にふざけ合いたくて、
ずっとずっと、ここに居座ってしまいました。」
懐かしむような声で、慈しむような声だった。
「…私、優しくなんてないそうです。
演じた優しい自分に酔ってるだけなんですって。
ただ皆さんに迷惑をかけているだけなんだそうです。
私がいない我々だの方が、ずっと良いものなんだそうです。
…だから、私はこうすることに決めました。」
スキンが歪み、現実の、俺らが顔を合わせてるエミさんに変わる。
「私を嫌うあなた達の手で、私を我々だから消し去ってください」
─待て
「エミさんそれでええんか、
折角グルさんに手を差し伸ばされて入った此処を、
そんなくだらん理由で去ってもええんか」
「いいんですよ、あなた達が私のせいで敬遠される方が心苦しい」
「この場に及んでも自己犠牲か」
「そうですね、これが『エーミール』ですから。
…ああ、この言動も嫌われるんでしょうね。
でもこれが文字通り最後なので、ふふ、ああ、楽しかった。」
死の淵に立っている彼は何が楽しいのかくすくすと笑って。
「…では、おやすみなさい」
そう目を瞑ると、無数の矢をその身に受けた。
柔らかな肉を抉るその光景が、
小綺麗な姿が赤く染っていくその光景が、
酷く目に焼き付いたのに、
すぐに薄れて消えていった。
『ほら、貴方に否定はできなかったでしょう』
諦めたような乾いた笑いだけがその場に残っていた。
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慧羽 - この話ヤバい…めちゃくちゃ泣きました。今ちょうど、好きなユーチューバーがアンチのせいで辞めてしまって、ちょうどアンチにとても怒ってたので、本当に泣きました…。神すぎる作品を作って頂き、ありがとうございます!! (2022年8月11日 20時) (レス) @page50 id: 55059b1f92 (このIDを非表示/違反報告)
森の民(プロフ) - 半分ファンタジーで、半分は現実でも起こることなんだなぁ。一気に読みました。神小説ありがとうございます。 (2022年8月10日 22時) (レス) @page45 id: 6c1a629d1f (このIDを非表示/違反報告)
ふかふかおふとん??(プロフ) - 神ですね涙がとまらない (2022年8月10日 20時) (レス) id: 1455eebfad (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ双子(プロフ) - 何この作品⋯!!神すぎる⋯泣きました。涙腺崩壊です⋯。本当アンチとか群れないとなんにもできないくせにいらないですよね⋯。本当この作品神すぎます。好きです (2022年8月10日 15時) (レス) @page14 id: b167e19be9 (このIDを非表示/違反報告)
天天(プロフ) - 泣いた。今もスレとかあるからマジでスレ消したい。アンチとかなんであるんだろなぁ… 自分が叩かれてたらって思ったらゾッとするはずなのに。個性じゃん。この作品マジで神ですね。好きです(唐突) (2022年8月10日 14時) (レス) id: bc837922a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マンゴスチン | 作成日時:2022年8月8日 7時