26匹砕ける。 ページ26
「エミさん、なにそれ」
「…『顔のない国民達』です」
「んなわざわざ分かりにくい言葉使ってイキんなそんな場合とちゃうやろ？
エミさん、なあ、端的に言え」
暫く迷ったように目を彷徨わせて、はくはくと声を出さず口を開閉させる。
…最終的には周りの炎に怯えるように目を伏せて、声を出した。
「数多いる『視聴者』の中の……私の、アンチ、と呼ばれる方々ですかね、恐らく。」
「いやアンチは確実やろアホか」
ぎっ、と手に持ったクロスボウを引いた。
狙いたいのはウザったい手共なのに、…なのに！
自動的に、矢先がエミさんに向いてしまう！
「エミさん退いてそいつら倒せへん！」
「…いえ、いいえ、退きません、退くわけには、いかないんです。」
「…ッ何でやエミさん！！
俺らともう笑い合いたくないんか！！！」
「そんなわけないやろ！！！！」
顔をくしゃくしゃに歪めて、エミさんは泣き叫んだ。
ごうごうと炎の燃える音が増える、近くなる。
「俺はッ、まだ皆と一緒に笑いあっていたい！
けどな、それは、そんな俺の自分勝手な我儘はこの人らが許してくれんかった！
それに、こんな我儘で、大好きな大切な皆に迷惑かけるわけにはいかへんから、」
だから、
泣きながらエミさんは笑った。
…鼻水や涙でぐちゃぐちゃな、無理矢理な笑顔やった。
「…っはは、そか。
エミさんがここに居たいって望んでること、知れただけで充分やわ、うん。
…ッなぁ、エミさん！また会おうな！！」
「…ッええ！会えたら会いましょう！
突拍子のない誰にも思いつけない言動で皆を湧かせ動画を盛り上げることが出来て、煽りキャラを保ち続けた素敵な貴方に敬礼を！
ではさようなら、人情深くて、優しい、人気者のシャオロンさん！」
「嫌味かお前！！エミさん本当そういうとこやで！！」
にっ、と最高に不敵な顔を作ってやって、同じく生意気に笑ったエミさんをしっかり見つめて、
グッ、と力を込めていた手を離す。
パァン、と軽快な音がして、エミさんの胸に矢がささったのを、彼が地面に倒れ伏したのを見届けた視界の端で、
俺の手を焦がす気で近づいていたらしい炎が離れていく様子が見えた。
お前にやられなくてもやってやったぞ、ざまあみろ。
そんな意志を含んだ嘲笑を残して、俺の意識は闇に解けた。
『…何が正しいのかもう分からんわ』
途方に暮れた声が煙のようにたゆたっていた。
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慧羽 - この話ヤバい…めちゃくちゃ泣きました。今ちょうど、好きなユーチューバーがアンチのせいで辞めてしまって、ちょうどアンチにとても怒ってたので、本当に泣きました…。神すぎる作品を作って頂き、ありがとうございます!! (2022年8月11日 20時) (
レス) @page50 id: 55059b1f92 (このIDを非表示/違反報告)
森の民(プロフ) - 半分ファンタジーで、半分は現実でも起こることなんだなぁ。一気に読みました。神小説ありがとうございます。 (2022年8月10日 22時) (レス) @page45 id: 6c1a629d1f (このIDを非表示/違反報告)
ふかふかおふとん??(プロフ) - 神ですね涙がとまらない (2022年8月10日 20時) (レス) id: 1455eebfad (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ双子(プロフ) - 何この作品⋯!!神すぎる⋯泣きました。涙腺崩壊です⋯。本当アンチとか群れないとなんにもできないくせにいらないですよね⋯。本当この作品神すぎます。好きです (2022年8月10日 15時) (レス) @page14 id: b167e19be9 (このIDを非表示/違反報告)
天天(プロフ) - 泣いた。今もスレとかあるからマジでスレ消したい。アンチとかなんであるんだろなぁ… 自分が叩かれてたらって思ったらゾッとするはずなのに。個性じゃん。この作品マジで神ですね。好きです（唐突） (2022年8月10日 14時) (レス) id: bc837922a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マンゴスチン | 作成日時：2022年8月8日 7時
