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「あ、そうだ。千冬〜？さっき何焦ってたの？」
「ッ、は？べ、つに焦ってねぇよ」
「あははっ、私が恋とかするわけないじゃん」
"大丈夫だよ、千冬"。
心配かけさせないようにか、
Aはニコリと笑みを浮かべてそう言った。
でも、その顔は全然笑えていなくて
千冬はそれが苦しく見えた。
「何が楽しくて恋なんかするのかな…」
「……A…」
「どうせ最後は、何も信じられなくなるのに」
小さなAが呟いた声は
当然千冬の耳に届き、千冬はAの名前を呼んだ。
今にも消えてしまいそうな彼女が怖くて、
そんな顔をして欲しくなくて。
「でも、ちーちゃんの為だし！応援するけどね！」
一瞬見せた悲しそうな顔を消し、
パッ笑顔を向けるA。
応援という言葉に嘘はないのだろう。
でも同時に、Aは
"あの日"の事を思い出しているに違いない。
Aが男嫌いになったあの日に…
恋なんかしないと決めたあの日に…
「だから千冬、恋愛のアドバイス下さいっ!!」
Aは恋だの男だの
そういう話は基本苦手だし嫌いだ。
だが、大好きな友達の為に
自分にまで相談して
なんとか協力してあげようって思ってるんだ。
そこまでするのは、
お人好しすぎるなって思うのと同時に
それはAの良いところでもあるなとも思う
でも………
Aが苦しそうなのに
無理して笑う姿を見るのは、千冬は嫌だった。
「………ったく、仕方ねぇな。オレに任せろ」
「！ありがとう!!千冬」
パッと笑顔を浮かべたA。
この顔を見れば全部吹っ飛んでいく。
やっぱり彼女は笑っていた方が良いと千冬は改めて思い
Aの笑顔を見ればつられて自分も笑ってしまうのだ。
「そのかわり、オレに頼るからには高くつくからな」
「うっ………分かって、ます」
・
回想は長くなったがこんな感じで 事は進行していった。
そして現在。場面は千冬の部屋に戻る。
「実は放課後、私も見守ろうと
その現場をこっそり見てたんだけど…」
「…………ダメ、だったのか？」
ちーちゃんの告白現場がまた頭に蘇る。
口籠る私をジッと見た千冬が、
微妙な私の態度を察したのか、
眉を寄せて不安そうな顔を見せた。
協力してくれた千冬も、なんだかんだ
ちーちゃんの応援を本気でしてくれていた。
だからその分、結果が気になるのだろう。
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作者名：結祈華
| 作成日時：2023年2月11日 0時
